【平成球界裏面史 近鉄編108】平成13年(2001年)6月に初来日し近鉄と契約を結んだジェレミー・パウエル投手。196センチの長身を生かした投球で1年目から大ブレークとはならず、14試合すべてに先発し4勝5敗、防御率・4・95と微妙な成績に甘んじていた。
ただ、2年目となった平成14年(02年)は宮崎・日向キャンプからチームに合流。当時、投手コーチを務めていた久保康生氏の指導を受けると、見事に化学変化を起こした。
32試合すべてに先発し17勝10敗、182奪三振で最多勝、最多奪三振、最高勝率、最優秀投手のタイトルを獲得。ベストナインにも選出された。チームはリーグ連覇を逃したものの、パウエルの急成長は近鉄にとって大きなプラス材料だった。
パウエルは好調だった理由を「もちろん、日本でのプレーが2年目ということもあり慣れてきたという事実はある。だが、最も大きかったのは投手コーチの久保さんの指導のおかげだ」と明言する。
久保投手コーチの理論は明快で日本人であろうが、外国人であろうが理解してハマれば結果が出る。元々、長身の投手の指導には定評があり近鉄では岩隈久志の成長をアシスト。阪神のコーチ時代はランディ・メッセンジャーを大変身させた“魔改造”の実績がある。
打者にとってボールとの距離を測りづらく、なおかつボールに威力があり、バットスイングで投球軌道を捉えにくいピッチングメカニズムを生み出すにはどうすればいいのか。
例えば、真上から垂直に落ちてくるボールを通常のバットスイングで捉えることが困難なのは、野球経験者なら理解できるはず。そのボールが落ちてくる高さが高いほど、ボールには引力が作用し落下速度が上昇する。
投手の投球は前から向かってはくるものの、それと同時に引力にも引っ張られ加速しながら落ちていく運動を起こしている。久保コーチはこういった原理をパウエルに丁寧に説明し、実際の投球に活用することを解き続けた。
少し前方にバケツや缶を置き、投球動作を行い真上からボールを投げ入れるイメージ。バスケでいうダンクシュートのような感覚で目標に向かってボールを上から投げ入れる。目標から少し離れて、同じように角度をつけて真上からボールを目標にたたき入れるイメージで投球を繰り返す。このイメージをキープしたまま、少しずつ距離を広げて繰り返す
このイメージがしっかりと完成したとき、正規の距離18・44メートルから投球すると、しっかり腕を縦に振った上で、地球の引力を利用した、角度のついたボールを投げることが可能になる。パウエルの場合は上から投げ下ろす大きなカーブも武器となり打者をほんろうするようになった。
196センチの身長とマウンドの高さをいかす。難しい技術ではなく、自然の摂理に合った動きを理解する。この原理原則を知って投球するという、わずかな知識の差がメンタル面でも自信となって影響してくる。メジャーでは結果を残すことができなかったパウエルだが、来日2年目で確固たる技術を身につけた。















