本気モード解禁――。岡田阪神が球団史上初の連覇へ向け、本格的に動き出した。15日に中日戦(バンテリン)にベストオーダーで臨み、0―0のドロー。試合後の会見では開幕投手に決定している先発・青柳晃洋(30)を〝称賛〟し、9回の決定機で三振に倒れた佐藤輝明内野手(24)を〝批判〟した。あくまでオープン戦で試合結果は度外視とはいえ、虎将が勝負師のスイッチを早くもONにした格好だ。

 29日の開幕戦までちょうど2週間。開幕投手に決まっている青柳が15日に先発し、6回4安打無失点と上々の投球を披露。打線は9回無死一、三塁で佐藤輝が空振り三振に倒れるなど勝機を生かせず、両軍無得点のまま引き分けに終わった。

 試合後の岡田監督は青柳について「(シーズンでも)6人ぐらい並ぶやろなあ左(打者が)。何とかな左も抑えとったし。開幕は青柳でいくんやから」と称賛。昨季はクイックモーション時の制球に課題があったが「今年はキャンプからコントロールもようなってる言うてるやん」と全幅の信頼を示した。

 ただ、同点の9回無死一、三塁で、竜の守護神・マルティネスに空振り三振に終わった佐藤輝には手厳しかった。1点が欲しい場面で覚醒の待たれる主砲の凡退に「そら結果やから。俺が言うよりも結果を見たら分かるやんか。練習でなんぼ(打球が)スタンドいっても一緒やんか。そら打たなあかん。前に飛んだら何か起こるけどな。三振は何も起きない。それだけのこと。スクイズで1点取りに行くか?」と険しい表情でバッサリ。

 開幕投手への称賛と、虎の未来を担う大砲への批判。これには本気で連覇を目指す岡田監督のメッセージが存分に込められている。

 かつて阪神を率いた野村克也監督は「人間は〝無視・称賛・非難〟という段階で試されている」との言葉を残した。二軍で観察しているだけの「無視」という段階から、一軍で活躍を始めると「称賛」されるようになり、選手として認められれば「非難」という形で説教を浴びせる。注目度の高い阪神というチームでは、これがメディアの報道を通して選手に伝わる。

野村克也氏(左)が阪神監督時代、岡田監督はコーチ、二軍監督を務めた(写真は1999年)
野村克也氏(左)が阪神監督時代、岡田監督はコーチ、二軍監督を務めた(写真は1999年)

 岡田監督ももちろん、自身の言葉が取材陣を通じ選手たちに伝わることを意識している。「称賛」した開幕投手の青柳には、これで満足せず謙虚に故障なく油断なく調整してほしいという感情。そして好機での三振を「非難」した佐藤輝には、監督の言葉を受け止め、世間の批評をものともせず結果を残すための行動をしてほしいという気持ちを込めているのだろう。

 かつて阪神の一、二軍監督として若虎を同時期に指導した野村、岡田両監督。似ていないようで実に似ている。ただし、コミュニケーション術と虎への愛という面では岡田監督の方が一枚上だ。

 リーグ優勝5回、日本一3回の野村監督の功績は偉大なのは間違いない。それでも阪神を2度のリーグ優勝に加え、日本一に導いたのは岡田監督が唯一無二。さらに今季目指す球団史上初の連覇へ、虎の将が早くも勝負師に徹する。