【取材の裏側 現場ノート】一石を投じた〝つぶやき〟は、個人というよりもプロ野球選手の思いを代弁したものだった――。ソフトバンク・牧原大成内野手(31)は、チームでもトップクラスの人気を誇る。
侍ジャパンが世界一に輝いた昨春のWBCに、故障のため参加を見送った鈴木誠也(カブス)の代替選手として出場。日本代表前監督の栗山英樹氏(日本ハムCBO)からは「僕にとって牧原は神様。試合に出る出ないではなくて、どういう思いであそこにいてもらうかが、世界一になるためには本当に大きな存在だった。牧原に土下座してお礼を言わなきゃと、ずっと思っていた」と野球人として最大級の賛辞を送られた。自らの存在価値を示し、世界のトップ選手たちと交流し、見識を広げて戻ってきた。
ファンあってのプロ野球。育成入団からはい上がってきた男は、背番号3ケタの時から支えてくれたファンへの恩義を決して忘れていない。ただ、この春、サインペンを走らせる際の表情が心なしか曇っていたのは事実だ。今月8日、自身のX(旧ツイッター)に「何でサインを貰って売るんですか?」(原文ママ)と投稿したことがファンの間で大きな話題になった。
野球界全体で転売行為が問題視されて久しいが、今春も事例が後を絶たない。その〝つぶやき〟は文字通り、拭えない違和感に向けられた言葉だった。
「このキャンプ地でも『なんでサインしないんだよ!』とかよく言われますけど、僕ら選手も(自分がサインしたグッズなどが)転売されているのを見たりすると、したくない気持ちになることだってあるんだよって。そういうのを分かってほしかったんです」(牧原大)。
口数が多い方ではない。ゆえに、ここぞの一言にインパクトがある。肝は「僕ら選手」と主語を強調した点。疑心暗鬼の中で気持ちよくサインペンを走らせることができない選手は少なくない。そんな選手たちが抱える葛藤を代弁していた。
キャンプは選手とファンの距離がグッと近づく貴重な機会。物理的に近づいても、心が離れては元も子もない。
その需要と供給は正常なのか。あえて〝二言目〟は口にしないピュアな男。牧原大の心の叫びは、届くだろうか。(ソフトバンク担当・福田孝洋)













