「風評被害」とも言える苦難の真相は――。プロ野球は10球団が1日にキャンプイン。西武からソフトバンクにFA加入した山川穂高内野手(32)は、紆余曲折を経て球春を迎えた。女性スキャンダルに端を発した無期限の公式戦出場停止処分、公式な謝罪会見を経ない移籍、その後の人的補償問題も輪をかけて批判の的となり続けた。いまだ尾を引く後味の悪い移籍の裏で何が起こっていたのか。

 野球界の正月と言われる2月1日。山川は午前7時45分にチーム本隊よりも30分ほど早く球場入りした。

 一番乗りこそ近藤に譲ったものの「最初なので流れが分かるまでは早く来たい。流れが分かってからも、僕はわりかしグラウンドにいるタイプですが…」と早朝出勤の意図を説明。「遅くまで残りたい気持ちもありますが、流れが分からないままずっといると、思ったよりも体が張って思わぬケガをするのもイヤ。もう少しやりたいと思うところで最初のクールはやめとこうと思います」と故障予防を優先させ、球界内でも有名な“練習の虫”を一時封印させる考えを明かした。

 自ら選んだ新天地で第一歩を踏み出したわけだが、これまで猛烈な逆風を受け続けてきた。妻子ある身で大切な家族を裏切る不貞行為に及んだことは軽率で、反論の余地はなかった。明るみに出た女性スキャンダルはその後、相手側の言い分を認定する証拠が認められないと判断された。和解金の支払いもない不起訴処分となったが、西武からの公式戦出場停止処分は解けないままシーズンを終えた。

 この間、球団を通した公式な謝罪会見は開かれなかった。スキャンダル発覚直後の捜査段階の弁明は難しくとも、東京地検が「不起訴」とした8月29日以降も行われなかった。それはなぜだったのか。事情に詳しい球界関係者は声を潜めながらこう説明した。

「山川本人は会見を開いて説明することを望んだが、西武側はそれを望まなかったようだ。ただ、球団が用意した公的な場で不用意な発言が出ればダメージになりかねない。それはコンプライアンス上、良くないと判断した組織としての選択も理解できる」

 組織と個人の間には双方に相いれない立場の違いもある。山川は個人の意思として、昨年10月に報道陣の囲み取材に踏み切った。

 だが、謝罪会見ではない形式に世間の理解は得られなかった。“説明せずに逃げた”とも受け止められた。不義理に映ったことが、FA移籍の決断や人的補償問題のタイミングで批判の連鎖につながった。

 そうした状況下、昨年11月から1月にかけての自主トレ先の確保もままならなくなった。言葉を発することもできず形成されていった“世論”の風向きを見て、練習施設から受け入れを拒否されることもあったという。今もメディアに露出するたびに批判は絶えない。客観的事実から見れば、風評被害と言えるかもしれない。

 いまだ根強いアレルギー反応と、露出のたびに繰り返されるバッシング…。通算218発を放つまでに育ててくれた西武球団と熱狂的ライオンズファンへの“不義理”という構図が定着してしまったゆえの負のスパイラル。球界内からは「本人が望んだ謝罪会見がどこかのタイミングで実現できていれば、これほど不幸な別れ方にはならなかったはず」とのフラットな意見も少なくない。

 ソフトバンク球団内では「本人が何をやっても、何を語っても、ネガティブな反応であふれる」と八方ふさがりの事態を憂うとともに、けなげに振る舞う山川の精神的疲弊を危惧する声が日に日に増している。もはや後戻りできないボタンの掛け違い。開かれなかった謝罪会見で機会を逸したことは痛恨だったが、前を向いて進むしかない。