ソフトバンク春季キャンプの11日、王貞治球団会長(83)の育成熱がサク裂した。約2週間にわたる宮崎視察の最終日に王会長が向かったのは、二軍(B組)が練習する第2野球場。お目当ての大砲候補・リチャード内野手(24)を筆頭に、チームの未来を担う若鷹たちを2時間以上チェックした。
生目の杜運動公園第2野球場、正午前に王会長は現れた。視察最終日、A組では山川ら主力がフリー打撃の真っ最中。アイビースタジアムの外までファンの歓声が響き渡っていた。それでも王会長の足は隣にある第2野球場へ向いた。かねて若手の台頭、とりわけ次代を担う野手の成長を強く望んできた。帰福前、最後に見届ける選手たちが育成選手や一軍出場機会をうかがう若鷹たちだったのは、いかにも王会長らしかった。
本来は午後2時台の飛行機で宮崎を離れる予定だった。だが、急遽キャンセルして後続便に変更。「みんな振りが鋭くなって、良くなっているね」。B組野手全員の打撃練習を見届け、そのままの流れで正装に着替えて帰路に就いた。
若鷹に伝えたいことがあった。かねて期待をかけてきた7年目の大砲候補・リチャードもその一人。「なかなか良かったですよ。山川の影響を受けてね。山川はあれだけ実績があって、現実に打っているわけだから、それはいいことだよね。なぜあんなに打てるのかってことをリチャードなりに勉強して、本人に聞いてもいいし、自分で考えてもいい。打てる人ってのはお手本になるわけだから」。リチャードの現在の取り組みを確認して背中を押すとともに、同じ右打ちの大砲で目標とすべき存在をうまく活用することを説いた。
宮崎で何を蓄えて福岡に戻ってくるのか。チームには柳田、近藤ら球界を代表する一流選手もそろう。ドアをノックすれば、気軽に応じてくれる先輩たちばかりだ。ヒントを自分から探し、習得しようとする執念を求めた。
王会長が忙しく球場を離れる頃、リチャードの姿は室内練習場にあった。マシンを相手に振り込むリチャードの横には、山川がいた。リチャードは約2時間にわたって、尊敬する師匠が「右打者にとって生命線」と力説する右足の使い方についてアドバイスされるとともに、ボールを選びすぎる傾向を指摘された。
夕暮れの帰り際、山川は「チームメートになったからこそ言える話がある。他のチームにいる時はザックリしか言えない。それは、ずっと見られないから。でも、同じチームで一緒に一軍にずっといられたりするのなら、細かいところまで話ができる」とサポートを約束した。本気でぶつかってくる後輩に対して、気概を試すことはあってもむげにはしない。王会長が望んでいた練習風景だった。
宮崎をあとにした王会長は、近日中にも三、四軍の福岡・筑後キャンプを視察する予定。常勝再建へ、そのバイタリティーは衰え知らずだ。













