世界のホームラン王の言葉は響いていた。ソフトバンク宮崎春季キャンプの10日、期待の4年目・井上朋也内野手(21)が山川穂高内野手(32)を文字通り〝ジャック〟した。

 ランチ特打と居残り特打で合わせて2時間以上、本塁打王3度の大砲を密着マーク。「自分と同じ右打者で、山川さんはWBCにも出て、ホームラン王を何度も獲られた長距離砲。こんなに長く一緒に練習できるというのはそうはない。とても充実した一日になりました」。

 高校通算50発を放ち、名門・花咲徳栄高から2020年ドラフト1位指名で入団。今季は三塁の本命・栗原陵矢内野手(27)に挑む形になるが、才能を一気に開花させて自分の城を築く腹づもりだ。「チャンスだと思っています」。昨季はシーズン終盤に一軍初昇格を果たすと、プロ初アーチを放つなど大器の片りんをのぞかせた。非凡な打撃センス、体力の充実、持ち前の負けん気の強さもあって、球団内の期待値は年々上がっている。

 王貞治球団会長(83)も熱い視線を送る一人だ。この日も打撃ケージ裏でランチ特打を視察。「いい打球を飛ばすよね」と大砲候補にくぎ付けだった。昨季一軍の舞台を経験し、迎える高卒4年目。気になる存在であるのは間違いない。確かな成長過程を歩んでほしい、との思いがある。そんな中で王会長は、井上の一日を評価した。

「山川のバッティングを隣で見られるのはいいよね。勉強してヒントを得るというね。自分の打撃ばかりじゃなくて、人から得るものを自分で探していくことが大事。前(3年目まで)のようではなく、ここまで上がってくると、そういうことが大事なんだ」

 井上はランチ特打の後も、予定になかった山川の居残り練習に飛び入り参加。「タイミングの取り方や足の上げ方だったり、気づいたことをすぐに聞けた。隣で感じて、気になることを質問したらすぐに答えが返ってくる。動画などでは得られない、スッと入ってくるものがあった。王会長がおっしゃっている意味はよく分かります」。

 通算218発、本塁打王3度獲得の裏には卓越した技術と野球勘、経験値がある。山川流を見て、聞いて、そこから学んで取捨選択して、自分流にアレンジする――それは若鷹たちの特権だ。

 ソフトバンクの未来を担う期待の長距離砲。充実した宮崎一軍(A組)キャンプを過ごす井上に、確かに飛躍の予感が漂っている。