50回目を迎えた東京スポーツ新聞社制定「2023年度プロレス大賞」の表彰がスタート! 各受賞者には個別にトロフィーと表彰状が授与される。併せて受賞者のインタビュー連載を開始。まずは最優秀選手賞(MVP)を受賞した新日本プロレスのIWGP世界ヘビー級王者・内藤哲也(41)の特別企画だ。23年2月21日の東京ドームで引退試合の相手を務めた武藤敬司(61)との初対談が実現。“伝説の一戦”の舞台裏を振り返る――。

 内藤 こうしてちゃんと話すのは初めてですね。

 武藤 会うのも約1年ぶりか。引退試合終わって話もしてないからな。

 ――内藤選手はもともと武藤さんにあこがれていた

 内藤 最初に好きになったプロレスラーが武藤敬司選手でしたからね。

 武藤 センスいいねえ。だからここまで来たんじゃないの?

 ――新日本の2012年1月4日東京ドーム大会で初対決

 武藤 それまでは(内藤を)知らなかったよ。試合が組まれて、どんなレスラーなのか少しはリサーチするからね。運動能力もよくて、まあでもその時は若かったからまぶしくは見えますよ。

 内藤 あの試合は武藤さんが先入場だったんですよ。ものすごい盛り上がりで、僕はバックステージで武藤さんへの歓声を聞いていた時に、その時点でちょっと勝負がついてしまったというか。ああ…キツイな、この試合は、と思いながら入場したのを覚えてます。苦い思い出ですね。

内藤に故三沢光晴さんのエメラルドフロウジョンを決める武藤
内藤に故三沢光晴さんのエメラルドフロウジョンを決める武藤

 ――その10年後に引退試合の相手に

 武藤 こっちも商売でやってるわけで、自分の引退試合だからな。しかもドームで。それなりに対戦相手も集客力、カリスマ性がないと。で、リサーチしたらやっぱり内藤が一番。あれがSANADAだったら、身内身内しちゃってダメだったよな、おそらく。

 内藤 やっぱりプロレスを好きになったきっかけの選手ですから。違う団体になってしまいましたけど「お前に決めた!」っていう言葉を聞いた時は…無表情だったはずですよ。ただ内心はすごくうれしかったですね。

 武藤「お前に決めた」なんて俺、内藤と女房にしか言ってねえぞ(笑い)。

 内藤 この世で2人しか言われてないわけですか。それは光栄ですね。

武藤に掟破りの足4の字固めを決める内藤
武藤に掟破りの足4の字固めを決める内藤

 武藤 ただ、試合に関して言えば残業(内藤戦後に同期の蝶野正洋をリングに呼び入れて特別試合が実現)があったから、内藤には申し訳ないことをしたなって思ってさ。俺の引退試合だから、俺の好きなようにさせてもらおうと思って、ちょっとダシに使っちゃったとこもあるんだけど。わがままを通させてもらおうって思ってさ。

素っ気ない?試合後、内藤と握手を交わす武藤
素っ気ない?試合後、内藤と握手を交わす武藤

 内藤 正直がっかりでしたよ。ああ、俺が最後じゃないのかと。そういう思いはありましたけど、あの大会は武藤さんの引退興行ですし文句は表立って言いませんでしたけど…。あれが新日本プロレスの大会だったら、ファミレスに緊急招集がかかってたでしょうね。

 武藤 試合後のリング上でさ、俺は蝶野とやりてえって思ってるわけよ。でも、なかなか(内藤は)帰らなかったよね? だって1・2・3が終わってるんだから、早くしねえとお客が帰っちゃうじゃんか。ええっ? 早く帰れよって、俺、ロープまで上げて内藤を出したんだから(笑い)。

 内藤 さすがにセレモニーまであるんだからお客さまも帰んないっすよ。そこは武藤さん、トランキーロ、あっせんなよと。

 武藤 必死だったよ、俺マジで。何人か帰るの見えたんだよ。で、「蝶野!」って言ったら戻ってきたんだよ(笑い)。

 内藤 あの空間って、もう俺しか楽しめないじゃないですか。他の選手が入ろうと思っても誰も入れない空間なわけで。俺だけの特別な空間を1秒でも長く楽しまないと損するなって思ったんで帰らされそうになっても「いや、まだだ」って粘ってましたね(笑い)。

武藤が「残業」と評した蝶野正洋戦
武藤が「残業」と評した蝶野正洋戦

 武藤 去年の暮れにNHKでやってた「サンデースポーツ」で23年のスポーツ名場面ってことで、WBCだ何だってある中で、俺(の引退が)17位だったからね? プロレス界からそういうところに選ばれたのはやっぱりうれしかったよ。

 内藤 そのほんの少し、何%かは内藤のおかげってことですよね? それに対しての武藤さんからの「ありがとう」は今のところ聞いてないですけど…。

 武藤 んなもんお前、プロレスラーなんだから。言わねえよ、そんなこと。俺だって(アントニオ)猪木さんに「ありがとう」なんてひと言も言われたことないんだから(笑い)。