尾を引く「人的補償騒動」に現場の声は…。西武からソフトバンクにFA移籍した山川穂高内野手(32)。最終的に甲斐野央投手(27)が人的補償で移籍したが、本来は極秘事項であるはずの和田毅投手(42)の“プロテクト漏れ”が明るみに出るなど大問題に発展した。日本球界の制度そのものを揺るがすセンセーショナルな事案を、現場の現役選手や指導者らはどう受け止めているのか。

 ただでさえ賛否を生んだ山川の移籍劇はさらなる暴風を呼んだ。日米通算163勝を誇る鷹のレジェンド左腕・和田が28人のプロテクトリストから外れ、人的補償で西武への移籍候補に挙がったとされた。

 リストの中身は「超」がつくほどの極秘案件。両球団も当事者たちも経緯を説明しようにもできず「和田が引退覚悟で拒否した」「ソフトバンクが西武側に指名の再考を求めた」など、さまざまな報道も飛び交っている。もはや収拾不能の状態に陥っているが、本人たちは否定も肯定もできる立場にない。仮に事実だとすれば人的補償の根幹を揺るがす大問題だが、ある意味で声を上げられない当事者たち以上に悶々としているのは今回の騒動と直接的には関係のない他の選手たちかもしれない。例えば巨人だ。現役選手からはこんな声も聞かれた。

「このままいくと、自分たちが将来、人的補償の対象として指名を受けた際に今回と同じような事態となるケースもゼロじゃないわけじゃないですか。移籍する以上は前向きに移籍したいですし、変な後腐れが起きないように制度を改善してくれるといいんですけど…」

 近年こそ巨人のFA戦線は停滞気味だが、基本的には積極的だ。多くの大物選手を獲得してきた一方でプロテクト外とした長野久義外野手(現巨人)や内海哲也氏(現巨人一軍投手コーチ)、工藤公康氏や江藤智氏らベテランが人的補償で他球団に移籍。主力だけでなく平良拳太郎投手(現DeNA)など数々の若手有望株を失ってきた。人的補償で指名を受ければ、選手に拒否権はない。それだけに現役選手にとって「明日はわが身」だ。それが“指名拒否”はもちろん、移籍選手以外のプロテクト漏れした名前がさらされる状況に不安が絶えないという。

 選手を守る立場の指導者たちも心境は複雑だ。FA経験のある某球団の現役指導者はこう語る。

「ウワサが独り歩きしてる場合もあるから踏み込んだことは言えないけど」とした上で「球団の言い分も分かるし、和田の言い分だって分かる。一つ言えることは、これからの選手のためにも今回のようなことは二度とあっちゃいけないよね。もともと決まっていた選手を白紙に戻して…ってことになるんだからね。かわいそうだよ」

 さらに「規則は規則」と厳格な見方をする者も少なくない。別の球団関係者からは厳しい声も飛んだ。

「真偽は置いておいて、プロテクト外の選手が引退を盾に拒否したり、球団側が指名の再考を求める行為がもし本当に許されるなら、プロテクトリストそのものが意味をなさなくなるんじゃないですか。現時点で黒ではないにしてもグレーな行為であることは間違いないですよ」

 さらには「どの球団も28人という少ない枠の中で、考えに考えてプロテクトする選手を選び抜いている。どんな事情があってもルールはルール、それ以上でもそれ以下でもない」とバッサリと斬り捨てた。

 いまだにくすぶり続ける一連の移籍問題。現場から上がる心の叫びは事態を変えるのか。