【森脇浩司 出逢いに感謝(61)】楽天ベンチに座って野村克也監督といろんな野球の話をさせてもらった。ビジターで味方の選手がアップに出てくるまでの限られた時間ですけど、有意義でした。こういうケースの走塁の仕方、守備のフォーメーション、アイデアをいただいたり…王貞治監督だって相手選手にアドバイスをすることはあるし、絶対に勝たなきゃいけないんだけど、あれくらいの人になるとプロ野球全体のレベルを上げることに意識がいってますよね。
自軍の選手がグラウンドに出てきたら「監督、今日はここで失礼します」と言って、また翌日とかね。野村さんからは「プロ球界で野球の話ができるのは落合(博満)と森脇だけだ」と言ってもらえた。楽天戦の楽しみでしたね。引き出しは多いに越したことはないし、コミュニケーションを取らせてもらって確実に引き出しは増えたと思います。ホークスを揺るぎない王者にするため、選手、コーチがどれだけ自分を磨いていくかが大事ですからね。
僕はずっと三塁ベースコーチ。仙台ではホームの楽天が三塁側になり、ソフトバンクのホームゲームでは普通に相手は三塁側なので、攻撃中はいつも野村さんのベンチが僕から近いんですよ。僕もそれなりのキャリアを積んでいたので王さんから出たサインを打者や走者に伝える。その時にベンチの野村さんの顔を見ながらやると、野村さんは隣のコーチに何やら話しだすんです。何を言うんだろうと…。
エンドランのサインを取りやめたこともあったんですが、すると後日、野村さんから「お前は読唇術をやってんのか。サインを出しながら俺のほうを見て、口の動きを見てサインを変えたやろ」って(笑い)。半分冗談でしょうけど、楽天ベンチが近かったんでいつもチラチラ見てね。刺激的で楽しかったですよ。
僕はよく「ノックの達人」と言われます。守備においては選手とのコミュニケーションツールとは思いますが、大事なのはその選手に必要なものかどうか、どのように導いていくか。試合中のアイデア、勝ちから逆算して指示を出し、マネジメントしていくということを王さん、野村さんに評価していただいていたのかもしれません。
王さんによく言われたのは「お前は今日入った若手でも何億円の選手も同等に接することができる」。むしろベテラン、高額選手のほうに厳しくできる。若手の台頭は不可欠な要素だけど、主力が向上しないとチームが上昇しない。人間って責任感が芽生えると同時に横柄になりがちなので、上を目指すならストイックな取り組みが不可欠です。
新たな変化と挑戦が必要で、結果が出たから来年変化しないというのは停滞と同じ。王さんも常に言い続けられていたことです。王さんもイチローも毎年フォームを変えていた。中心選手は大きな勇気とイマジネーション能力を持って取り組んでいかなきゃいけないですよね。












