監督1年目の教え子へ贈る金言――。4年ぶりのリーグ優勝、日本一奪回を狙うソフトバンクは一軍ヘッドコーチ、二軍監督を歴任した小久保裕紀新監督(52)を迎えた。過渡期の真っただ中で常勝再建という重責を担う〝スター監督〟。現役時代に薫陶を授けた王貞治球団会長(83)は、自身の経験も踏まえ「忍耐」というキーワードを説いた。

 王監督時代、光る才能を見込んで「絶対的4番」に育て上げた。王イズムの継承者――。今季から一軍指揮を執る教え子に「やっぱり優勝に向かって戦っていくということを身を持って知っている人間だからね」と、覇権から3年遠ざかるチームの復権にいやが応でも期待を寄せている。

 小久保監督は現役通算2041安打、413本塁打を誇ったスターだった。「日本の場合はアメリカと違って、リーダーになる人がキャリアを持っていないと選手たちに伝わるものがちょっとね…というところがある。アメリカはファームでプレーしてメジャー経験がないというような人が監督をやったりというケースも多いけどね。そういう点では日本の場合はちょっと違う。国民性の問題だと思うんだけどね」。強力なリーダーシップで、ホークスのみならず〝外様〟の巨人で主将を務め上げた。

 特筆すべき経歴ゆえに威厳は際立っている。ただ、どんなに輝かしいキャリアを有していようと、球界では「監督1年目は特別」と言われる。王会長もそれを否定しない。「違うよね。だって、自分がいないんだから」。ルーキー監督が直面するであろう心中を端的に捉える表現は、自身の経験あってのことだ。

 選手時代はマンパワーでチームを勝利に導いてきた。だが、監督がグラウンドでプレーすることはない。自分がいないんだから――。〝忍耐〟を説く言葉だった。「だってね、相手とお互いに戦ってうまくいったって(勝負に勝つのは)5割。バッターは特に3割いけばいい選手っていうね。だから期待はするけど、打てなかったからってガッカリすることはないんだよね。〝打ってくれりゃあ儲けもん〟というくらいにしておけばね」。我慢に必要な心理的余裕を保ち続ける意識づけを、自身が青年監督だった40年前を思い返しながらアドバイスした。柔らかい表現には、教え子への思いやりがあった。

 過渡期のチームを率い、その中で結果を求められる小久保政権1年目。忍耐強く――。王イズムの継承に使命感をにじませる教え子へのメッセージだった。