【赤ペン! 赤坂英一】広島選手のFA宣言も変わったなあ、と感じたファンは多いだろう。

 オリックスへFA移籍する西川龍馬外野手(28)が、先週23日のファン感謝デーに参加。新井監督に促されてあいさつに立ち「全然やじってもらって構いません」と話すと「りょうま~!」と温かい歓声を浴びた。

 西川は直前までファン感の出席を迷っていたそうだが、鈴木球団本部長が「胸を張って出なさい」と後押し。爽やかですがすがしい別れを演出した。

 思い出されるのは2018年、FA宣言した丸がファン感に参加した時のことだ。その時点ではまだ巨人移籍を決断していなかったため、ファンから「残ってくれ!」と残留コールが起こった。

 ところが、巨人移籍が発表された途端、ネットの転売サイトで丸のレプリカユニホームが大量に投げ売りされる事態に。「赤い雑巾」「ゴミ」「裏切り者」「カネの亡者」などと丸を誹謗中傷するコメントであふれ返った。

 丸は当時「いろんなデマも流れている。家族のプライベートにも影響しかねない」と苦しい胸の内を吐露している。

 その18年、西川は3年目にしてサードの定位置をつかみ、規定打席未達ながらプロ初の打率3割をマーク。丸のFA宣言にまつわる騒動を覚えていたからこそ、ファン感では「やじってもらって構いません」とファンに語りかけたのだろう。

 旧広島市民球場が本拠地だった時代、カープはFA選手を獲らない運営方針を徹底していた。
 1998年に佐々岡がFA権を取得した際には慰留も再契約もせず、佐々岡本人もそういうものと認識して残留。06年にFA宣言した金本は、選手の権利を認めて100万円でいいから再契約金を出せないか、と球団と掛け合った。が、受け入れてもらえず、阪神への移籍を選択している。

 新井監督も、現役時代に阪神へFA移籍した08年、マツダスタジアムでブーイングを浴びた。ズタズタに引き裂かれた広島時代のレプリカユニがグラウンドに投げ込まれたのは有名な話だ。

 そうした経緯があったからだろう。15年に広島に復帰する時は「広島を出る時以上にめちゃめちゃ悩んだ」と新井監督は話している。復帰を持ちかけた鈴木本部長にも「僕はカープに戻っちゃいけない人間なんです」と一度は断りを入れたほど。

 西川が温かく送り出された背景には、そうした長年にわたるドラマがあったのだ。広島ファンや関係者の熱い思いを背に、来年からはオリックスで大いに暴れてほしい。