DDT12日の両国国技館大会で、赤井沙希(36)が約10年間のプロレスラー人生に終止符を打った。

 元プロボクサーで俳優の赤井英和を父に持ち、タレントとして活動していた2013年8月にプロレスデビュー。活動10周年の節目で決断した引退試合では、坂口征夫、岡谷英樹とのトリオで丸藤正道(ノア)、樋口和貞、山下実優(東京女子)組と対戦した。敵チームの猛攻を浴び、何度倒れても執念で立ち上がったが、最後は山下のスカルキックに沈められ、セレモニーで引退の10カウントゴングを聞いた。

 試合後の会見で赤井はプロレスデビューに猛反対し、一時は絶縁状態にも陥った母に「父が試合でケガしたりするのを母は間近で見ていたので。10年間心配させ続けたので、自分の意思でケジメをつけて自分の足で帰ってきましたって報告したいです」とメッセージを送った。一方で父の英和には引退を伝えることができていなかったというが、2~3日前にその機会があったと明かした。

 キッカケは引退に際してあるメディアから、英和にコメントを求めてもいいか、相談を受けたことだった。前妻の娘という立場もあって、赤井は「どうぞ、どうぞ。でもたぶん断られてしまうと思うよ」と伝えていたといい、実際にも「コメントは差し控えさせていただきます」と回答が来たという。

 この経緯を聞いた赤井は「私、何かやらかしたのかな。なんでこんなことになるんだろうって直接、父に電話しました」と告白。「最初は誰か分からなかったみたいですけど『前の嫁の娘の沙希です。10年間プロレスをやって、今週の日曜にリングを降りて引退します。たぶん会社の方にコメントを求める声があったと思うんだけど、父はケガしてやむを得ない状況でリングを降りたけど、娘は自分の意思でリングを降りて、競技は違うけど同じファイターとして父親から何かひと言、聞きたかったんだと思うよ』と説明しました」と、電話の内容を明かした。

 さらに赤井は続けて「『お疲れさんでしたでええんちゃうか』って言われました。だから…皆さんが思うほど現実は美談じゃないです」。複雑で繊細な親子関係にも見えるが、赤井にとっては決して後ろ向きな話ではない。

「自分は電話してよかったと思ってるし、この人生で良かったと思います。この思いがなければ人に優しくできなかったし、DDTのみんなと出会えなかったかもしれないので。血のつながりだけが家族じゃないって思いました。血のつながりがあるけど親ではない人と、血のつながりはないけど、DDTはみんなの家族なので。改めてそれが全てじゃないなって思いました」と、笑顔を交えつつ父のやり取りを振り返っていた。