【森脇浩司 出逢いに感謝(10)】僕がホークスにいたころから金子千尋はセンス抜群の投手と思っていましたよ。見た目の強さは感じなかった。外見がごついから強いとか、細いから強くないとかではなく、アスリートも人間もそんなもんじゃないんだけど、僕はこの投手に強さが宿れば球界の中心投手になると思っていた。今の大谷翔平(エンゼルス)だってすごさというより強さを感じますよね。一級品の金子をどう磨くか、ですね。
人間みんな繊細な部分は持っているわけですが、その繊細な部分が彼を大きく伸ばしているかといえば「?」マークがつくことはあった。自分の力が今どこにあるかという自己分析が大事で、やはり彼も完璧主義者なんです。
僕が強引に背中を押したことがありました。2013年、春季キャンプで金子は右腕の炎症で本隊を離れ、オープン戦の登板もないままにリハビリ調整を続けていました。ブルペンには何回か入ったんです。だけど、自分の中でなかなか踏ん切りがつかない。慎重に次の段階はどうするこうするみたいなね。強さを宿すために必要なのは決断力なわけです。僕の中では休む勇気、一歩前に踏み出す勇気。どちらも勇気はいるけども、彼は全部が全部完璧に揃わないと踏み出さないという思考に思えたんです。
無理とむちゃは違うし、無理する必要もない。ただ無理もさせない中、今のプロセスで開幕に投げなくても次のカードで投げれば問題はないのかもしれない。でもオリックスというチームが飛躍を遂げるためには金子が開幕で投げる必要があると思った。エース・金子を確立させてこの世界で生きていく。ここで踏み出さなきゃダメだって。お前の野球人生のために、と本人に伝えました。
開幕前のほっともっとフィールド神戸の調整を終え、本人に聞くと「7割くらいです」と。体のコンディションは大丈夫だけど、ボールは7割だと。なら「7割でいいからやってみろ。お前にゲームをやるよ。どれだけ打たれるかやってみ。打たれないよ」と言ったんです。投げれないなら投げちゃダメだけど、コンディションに問題がなく、ボールに関して7割というなら俺も素人じゃない。お前の7割でどれだけ打たれると言うのか。完璧な投手だって打たれるんだから。そこは自信がありました。うまくいってもいかなくても、そこで得たものを引っ提げて年間を戦ってくれれば大きな財産になる。
実戦登板のないまま、3月29日のロッテとの開幕戦(QVCマリン)に先発した金子は8回を6安打1失点。試合は延長戦の末にサヨナラで敗れたけど、金子には7割でも十分なことができるということを伝えたかった。今の自分を伸ばしていくと同時に新しい自分を発見する。発見させるきっかけを与えてあげることがリーダーの仕事。トライするのは勇気がいるけど、不可欠なことなんですよね。












