崖っぷちまで追い込まれた男が、巨人の救世主になれるか――。首位・阪神を6ゲーム差で追う原巨人の攻守のキーマンが副キャプテン・吉川尚輝内野手(28)だ。ここ9戦、「1番・二塁」を託されると打率3割6分8厘、2本塁打、6打点の大活躍。チームの4連勝に貢献しているが、打撃が低迷した一時期は精神的にトコトンまで追い詰められていた。

 通算成績で打率2割6分1厘、6本塁打、24打点と安定してきた背番号2だが、一時はどん底だった。6月30日の阪神戦(東京ドーム)から21打席無安打の「トンネル」に陥った。

 打率も2割3分7厘まで低下。原監督からは「(吉川は)チーム打率より下がってるわけだから、特徴持たなきゃダメだよ。チーム打率より下がってる人はレギュラーで出ちゃダメなんだから。悔しけりゃ、チーム打率を上げるバッターにならなきゃいけない」とゲキを飛ばされていた。 

 無安打6試合目といよいよ追い詰められた7月7日のDeNA戦(東京ドーム)のこと。試合前練習中に吉川は青ざめた表情で「七夕なので『打てますように』とお願いをしました」とポツリ。一軍ロッカーに短冊を飾る笹などは用意されておらず「空に向かってお願いしました」と織姫さまと彦星さまにすがるほどで、文字通り〝極限状態〟だった。

 必死に結果を求めるがゆえに、できることは何でもやる。その吉川の祈りは天に通じた。2打席目に中前打を放つと、そこから成績は右肩上がり。再浮上のキッカケをつかんだ。

 現在、チーム打率は2割5分3厘と吉川は指揮官からの〝ノルマ〟もクリア。ここからは自身の打撃成績でチーム打率をより押し上げていく。

 攻撃面だけではない。守備でもセ最少のチーム34失策に貢献。坂本不在中は遊撃・門脇と数多くのスーパープレーを披露し、指揮官から「二遊間には助けられている」と何度も感謝の言葉を受けた。復帰後の長年組んでいる坂本との二遊間コンビも順調だ。

 川相昌弘総合コーチ(58)は「打撃は7割失敗するんだから、調子が良くても悪くても守備はしっかりやらないといけない」と吉川を叱咤しながらも、その能力については「ゴールデン・グラブ賞を獲得してもおかしくない」と高く評価している。

 どれだけ連続試合安打が続いても「たまたまです」と吉川は謙虚な姿勢を決して崩さない。1番打者の固定は常勝チームの必須条件でもある。打てなくなる怖さを誰よりも知る男が、V奪回の行方を左右しそうだ。