女子プロレス「スターダム」で史上2人目となる偉業を達成したのが人気ユニット「コズミック・エンジェルズ(CA)」のリーダー・中野たむだ。ワールド王者として臨んだ5月27日の大田区大会ではワンダー王者・白川未奈との2冠戦を制し、2017年の岩谷麻優以来となる赤白2冠王者に輝いた。苦しい地下アイドル時代を乗り越え、女子プロレスの頂点に上り詰めた原動力は何だったのか。そして今後の青写真とは? 快挙の2冠王者を直撃した。

 ――2冠王になって

 中野 うれしくて毎日2本のベルトと一緒に寝ています。ミュージカル女優を目指していた時代からいろんな人に「お前はダメだ。どうせ売れない」って言われ続けてきた。あの時、オーディションに落とした人たちが今のたむを見たらきっと後悔すると思います。アイドル時代には7回もプロデューサーに見限られて、自分を全否定された気がしたこともありました。だから今、私を見捨てた人たちに、この2冠ベルトを突きつけて回りたいです(笑い)。

 ――周りからの反響は

 中野 両親やプロレスラーの仲間はもちろん、かつての舞台仲間の子とか、たくさんの人からおめでとうメッセージをいただきました。(元パートナーで引退した)星輝ありさからも「おめでとう。うれしすぎて、ビックリすぎて泣いてる」って連絡が来ましたね。

 ――そのお父様は馬主だとか

 中野 そうなんです。5、6頭?の一口馬主をやっているみたいです。もっと多いのかな…。最近、一番頑張ってくれてるのはナミュールちゃんって言っていました。父の趣味が馬で、小さいころには競馬場に連れていってもらって馬に触ったこともありました。そんな父からも「2冠おめでとう」のメッセージと東スポさんの記事が送られてきました(笑い)。

 ――2冠王になって変わったことは

 中野 団体の顔、女子プロレス界の顔として重圧は毎日感じています。あと、スターダムに参戦したとき、紫雷イオ(現WWEのイヨ・スカイ)さんがすごく厳しかったんです。赤のベルト(ワールド王座)を巻いてからイオさんが厳しく接してくれていた理由がわかった気がして。スターダムに参戦して初めて勝ったのが(2018年4月の名古屋で)イオさんと組んでやった電流爆破だったんです。勝てたんですけど、イオさんに「もっと雑用から頑張らないといけない。プロレスをやるのはそれからだよ」って言われたんです。

 ――それが奮起するきっかけに

 中野 悔しかったんですけど、「周りへの感謝の気持ちを忘れるな」ってことなのかなと受け止めました。イオさんは女子プロレス大賞を受賞した時も「みんなのおかげで取れた賞だからありがとう。みんなの賞だよ」って言ってくれたほど常に周りの人に感謝していた。私もそんなふうになりたいと思って気が引き締まったし、より一層雑用を一生懸命やるようになりました。イオさんの言葉がプロレス人生の指標になりましたね。

 ――他に影響を受けた部分は

 中野 試合を見て「今日のあれ何? 気が抜けてんじゃない? 何でできないの? 自分がかっこ悪いのはいいけど、相手にかっこ悪い思いさせんじゃないよ」って常に言ってました。プロレスって相手との信頼関係が大事だからイオさんの言葉は胸に響いていて、私も月山和香や白川未奈とかに伝えてました。人に厳しくできるのって、愛がないとできないと思うんです。この子は成長してほしいと思ってるから厳しくする。イオさんは団体愛がすごくあったんですよね。

 ――たむ選手も団体愛は強い

 中野 だから私も大田区の試合後にマイクで白川に「CAに戻ってきてもいいけど、第4の女になるよ」って言ったんです。多分見てる人、嫌な気持ちになったと思うんですけど。白川は白いベルトを落として地獄を見た。でも、その悔しい思いをもっと駆り立てることが私にできることだと思ったんです。そうじゃないと育たないし、もっとよくしていくためなら、私は嫌われてもいい。だからイオさんの愛の真意っていうのがやっとわかったのかなって。なので今度は私が嫌われるのを覚悟で挑戦者の尻を叩いていこうと思います。

 ――いつかイオと対戦したい気持ちは

 中野 もちろん戦ってみたいです。あの時、雑用から頑張れって言われた私はプロレスラーとして見られてない状態だった。だから成長できた私を見て、何て言ってくれるのか知りたいです。女子プロレスを盛り上げていくことで、恩返しになると思っている。イオさんが愛したスターダムを私もこんなに愛してますよって見せたい。

 ――今後の野望は

 中野 小さい女の子のなりたい職業ナンバーワンに「女子プロレスラー」って言ってもらえるようになりたいです。だから私はプリキュアっぽい衣装着て、ポーズ取ったりしていて。練習生も増えたらうれしい。練習生として入っている子は、たむをきっかけにしたっていう割合が多いと思っていて。実際にレディ・Cはもともとたむのことが好きで応援してくれていたんです。会場が女性ファンと男性ファンが半々になった時がスターダムが本当にメジャーになる時かなと思っているので、王者としてそんな団体にしていきたいです。

 ☆なかの・たむ 3月22日生まれ。愛知・安城市出身。アイドル活動を経て2016年7月18日のアクトレスガールズ新木場大会でデビュー。超戦闘プロレスFMWでは電流爆破も経験し、17年6月のアクトレスガールズ退団後はスターダムに参戦。20年12月に「コズミック・エンジェルズ」をユニットとして独立させ、23年4月に団体最高峰のワールド王座を初戴冠。7月2日横浜武道館大会ではワンダー王座V1戦でMIRAIと対戦する。必殺技は猛虎原爆固め。157センチ、50キロ。