【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】2021年5月3日、米首都ワシントンDCに、とある9人組のツアー団体がいた。蛍光の黄色のサンバイザーとベストを着たガイドが、記念碑や名所を通るたびにメガホンで解説する様子に、通りがかった別の観光客も思わず聞き入っていた。

 そして横を振り向いて、驚く。

「えっ? 本物のツアーガイドじゃない? 野球選手? ブレーブスのブルペン投手たち?」

 好きな都市はどこかと聞いた時に「歴史的な部分で、DCが好き。一度ブルペンの皆で自転車ツアーしたことがあるよ」と、今はレンジャーズに移ったウィル・スミスが教えてくれた2年前の面白エピソードだ。

「決行日の1週間前くらいだったかな? 当時ブレーブスはナショナルズとの遠征が3回あったんだけど、その遠征はたまたま皆、彼女とか奥さんが来ないって言うんで、皆で首都を見て回ろうってことになったんだ。意外と行く機会も少ないし。ルーク・ジャクソンがブルペンで一番面白いヤツだったから、ルークをツアーガイド役にして、事前に情報を調べさせ、アマゾンでガイドの衣装を注文してさ。タイラー・マツェクがレンタル電動自転車を見つけてきて、当日ホテルに届けてもらった」

 ウィルは目を細めながら楽しそうに振り返り「写真があるはず」とルークのインスタを引っ張り出して見せてくれた。

 そこにはワシントン記念塔の前で確かに「普通とも言えなくない?」ブレーブス・ブルペン御一行様がルークを中心に自転車にまたがって1列にずらっと並んでいた。ルーク以外がモノトーンの装いなので、やたら蛍光ベストとメガホンが目立つが、実にナイスな笑顔。他には訪れたリンカーン像だとか、街中を軽快に走っている様子なども紹介されていた。

「スタートは『無名戦士の墓』だった。静かに敬意を払うシリアスな場所だから最初に行って、そこから記念堂やホワイトハウスなど、街中を時速10・12マイルで、ゆったりクルーズ。朝10時半ごろから始めて、午後5時ごろまで自転車をこいでいたんじゃないかな。ルークはなかなかのガイドで、何度も本物のガイドだと思った人たちに囲まれたよ。細かい情報も調べててさ、記念碑などの横に彫られた文字が実は誤字だったりとか、直した痕跡なんかについても解説してくれた」

 オフ日にチームメートらとゴルフに行くことはよくあるが、自転車ツアーは初めてだったとウィル。

「最後はホテル横のシェークシャックでバーガーとシェーク。その日は、早くベッドに入ってよく寝られたよ。学びと笑いがたくさんあって、本当に充実した楽しい一日だった」

 試合中、ブルペン投手らの待ち時間は確かに長い。こんな計画を立てて盛り上がったりしていたのか。

「そういえば、サンディエゴでアザラシツアーなんてのにも行ったな」

 大リーグ球場のある都市を観光する際は、少し周囲を気にしてみてもいいかもしれない。大リーガーたちが一緒に回っているかもしれないから。

☆ウィル・スミス 1989年7月10日生まれ。米国ジョージア州出身。33歳。左投げ右打ちの投手。195センチ、108キロ。2008年MLBドラフト7巡目(全体229位)でエンゼルスから指名されプロ入り。12年にロイヤルズでメジャーデビュー。同年からローテーション入りし、防御率5.32ながら16試合に先発登板し6勝9敗の成績を残した。13年オフに青木宣親とのトレードでブルワーズへ移籍。リリーフに転向した14年は78試合に登板し30ホールドをマーク。16年途中にトレード移籍したジャイアンツでは19年に34セーブ、20年からFA移籍したブレーブスでは21年に37セーブを挙げた。22年途中にアストロズにトレード移籍。オフにFAになり今年3月レンジャーズと契約。