第5回WBCで侍ジャパンの世界一に大貢献した、カージナルスのラーズ・ヌートバー外野手(25)が独占直撃に応えた。日系人選手として初めて日本代表のユニホームに袖を通すと、持ち前の闘志と明るさで侍打線の切り込み隊長としてチームをけん引。「ペッパーミル・パフォーマンス」はあっという間に大流行した。愛称「たっちゃん」もすっかり定着したナイスガイが、青池奈津子氏に明かした“素顔”とは――。

【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】「おにぎりは握れるかって? 作ったことはないけど、おそらく目の前にごはんがあったらできると思う」

 思いもよらぬ質問だったのだろう。

「確かに、自分は日本で生まれ育った母に育てられたから、作れてもいいかも」

 ラーズ・ヌートバーが驚きと爆笑しながら、答えてくれた。好きな具材は「梅干し」というところが日本人ぽい。

「いや、母にはよく笑われる。僕は日本人ぽくないって。自分とは違うって。そりゃあ違う国の違う文化で育ったから違って当然なんだけど。でも家などでは母の日本的なやり方で育ったし、ママっ子だったから、日本人としての誇りは母譲りだと思うよ」

 今回、初めて1対1でラーズと話す機会をもらったのだが、なんというか…噂通りのイケメンだった。顔もそうだが、何よりその人柄が際立つ。

「日本人としての誇りは持っているけど、自分にはあまり人種の概念がないと思う。兄と姉が幼いころに日本に行って、姉は日本人らしさが足りないって言われて泣いて帰ってきたこともあったみたいなんだけど、自分はそういう経験が何一つない。友人もメキシコ人、グアテマラ人、フィリピン人、黒人、白人などいろいろで、皆互いにいじり合ったりしたけど、自分が日本人だから違うと思って生きてきたこともなければ、両親もそんなふうに僕を育てなかったから、自分は自分。ただのラーズ」

 快活、真摯、そして爽快に輪をかけたような自然体なのだ。

「日本人らしいところは…。食べ物とか、家で靴は履かないとか、そういうシンプルなところかな? きっとクラブハウスにいるヤツらと育ち方はだいぶ違うんだろうけど、実際自分は自分の育ち方しか経験していないから、何が違うかもあまり分からない」

 彼の魅力は、その垣根のなさなのだろうと感じた。母・久美子さんについても聞いてみると…。

「あっ、母は社交的で面白い人だけど、幼いころ、すごく厳しかった。今は親友みたいに仲良くていろんな話をするけど、以前はマジでスーパー厳しかった」と「厳しかった」を繰り返した。

 ラーズが幼いころの母・久美子さんは…。

「とにかく時間厳守。家に帰る時間を守りなさい、約束の時間に間に合うよう行きなさい、家に帰ったらすぐに宿題をしなさいって。よく暗記カードで一緒に勉強したし、学業など、子供時代にやらなきゃいけないことはしっかりやらされた。悪いことをしたら叱られたし、親としてのしつけに関してはちゅうちょがなかった」

 自分の母を思い出したのは、私だけだろうか。ちなみに子供のころのラーズは、近所でピンポンダッシュのイタズラをしたり、門限を破ったり、友人とけんかしたり。久美子さんには手の焼けるかわいい末っ子だったようだ。いつか機会があったらぜひうかがってみたいと思う。

 インタビュー後、ドジャースのダッグアウト前で取材していると、インディアナ州から来たという初老のカージナルスファン3人組に話しかけられた。

「ヌートバー知っているかい? お母さんが日本人なんだよ。今、セントルイスですごく人気がある。プレーも人柄もファンに愛されているよ」

 日本人として、誇らしく思う。   

 ラーズ・ヌートバー 1997年9月8日生まれ。25歳。米国・カリフォルニア州出身。190センチ、95キロ。右投げ左打ちの外野手。米国人の父と日本人の母を持ち、日本名は榎田達治。9歳のとき、田中将大や斎藤佑樹らが出場した日米親善高校野球大会でボールボーイを務めたことがある。2018年のMLBドラフト8巡目(全体243位)でカージナルスから指名されプロ入り。21年にメジャーデビュー。同年58試合に出場すると、22年は108試合に出場し打率2割2分8厘、14本塁打、40打点。オフに日系人では初めてとなるWBC日本代表に選出された。WBCでは「1番・中堅」として全7試合にスタメン出場。打率2割6分9厘、出塁率4割2分4厘の活躍で、日本の3大会ぶり世界一に貢献した。