【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】「僕は大学へ行かない選択をしたけど、行っていたらアトランタのジョージア工科大学で、大気科学を勉強して気象学者になるつもりだった。天気予報アナウンサーになりたかったんだ」

 携帯電話に天気アプリを13個も入れているほど天気好きだが、プロ野球選手になる夢を選んだタッカー・バーンハート。

「天気予報と野球の当たる確率はどっこいどっこい」などと冗談を言っていたが、彼の料理の腕は筋金入りだ。

 3年前のコロナ禍でシーズンがなかなか開幕しない中、レッズ企画でラジオ実況のトミー・スラウ氏と自宅のキッチンを中継し、クッキングバトルをしている映像が今も残っているが「テンダーロイン(ヒレ肉)をイタリアン・スパイスで味付け。ローズマリー、パセリ、タイムを少々と塩コショウ。肉に直接たっぷり染み込ませ、グリルで焼く。周りを網の跡がつくくらいカリカリに仕上げた後はオーブンへ。一番分厚いところが(華氏)145~150度になるくらいに火を通したら、サンドにする」と、テキパキとジャガイモを切りながら解説する姿は「いつも妻と2人でフード・チャンネルを熱狂的に見ている」と、料理番組のシェフも顔負けの手際の良さだ。

 いずれ自分のレストランを持ち、自ら包丁を握りたいというほど、料理好きだというタッカーに料理を始めたきっかけを聞くと、返ってきたのが「天気」の話だった。

「母が常に家庭料理を出してくれる人だったから、料理は当たり前のものという感覚があったけど、ワインを飲み始めたのが大きいかな」

 米ワインの名産地ナパ・バレーにも5回は行ったというタッカー。

「ワインへの興味からブドウについて勉強するようになって。ワインも飲み続けていると、同じエリアでも年によって味に違いがあるのが分かってくる。どこで、どんなふうに作られたかで味が全然違う。ブドウが天気の影響でまったく変わってしまうということが、僕にはとても興味深かった。そこから、ペアリングする料理について気になり出して、自分で作り出した。今では、野球から離れて自分を楽しむ大切な時間になっている」

 得意料理は、チキン・ピカタ。料理番組を見て気になったら作ってみるそうで、時には3時間立ちっぱなしで料理をすることも。

「アラバマ州出身の妻が久しぶりにガンボ(南部の煮込み料理)を食べたいって言うんで、コーンブレッドもあわせて作ったよ。われながら会心のできだった」

 料理の話をするタッカーの表情は、さっきよりも何倍も明るい。

「あはは。食べ物は僕のハッピープレイスだからね。今は子供たちが5歳と2歳で小さいから長期旅行が難しいんだけど、どうやったらイタリアのトスカーナに行っておいしいご飯とワインにありつけるか思案中だよ」

 爽快、明瞭、丁寧で初対面でもとても話しやすかったタッカー。まさか料理が天気とつながっているとは思いもしなかったが、野球のクラブハウスは意外とこんな話が飛び交っていたりする。

☆タッカー・バーンハート 1991年1月7日生まれ。32歳。米国インディアナ州出身。右投げ左打ちの捕手。2009年のMLBドラフト10巡目(全体299位)でレッズから指名されプロ入り。14年4月にメジャーデビュー。同年21試合に出場すると、15年は81試合と出場試合数を増やし、16年からは正捕手に。17年、20年にゴールドグラブ賞を獲得。21年にタイガースへ移籍。FAとなった22年オフにカブスと2年契約を結んだ。守備に定評があり、強肩で知られる。