【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】今から17年前、イスラエルにプロの野球リーグが1年だけ存在したらしい。

「僕も詳しくは分からないんだけどね、世界中から選手を集めて6チームだったかな。おそらく時期尚早だったんだと思う。人々が受け入れる準備ができていなかった」

 チーム・イスラエルの一員としてWBCに出場する、エンゼルスのザック・ワイス投手。東京五輪野球のイスラエル代表メンバーでもあった彼に日本の感想を聞こうとして、思わぬイスラエル野球の裏側を知ることとなった。

「オリンピックの時にもたくさん話し合ったんだけどね、ゴールは2040年のオリンピックなんだ。イスラエル生まれのイスラエル国民だけで構成されたチームをつくること。アメリカ生まれのイスラエル人ミックスではなく。だから初代の僕らはイスラエルに野球を広めること、それが情熱の軸となっている。代表入りしているやつらは皆、野球以上の意味があること、自分たち以上の何かを背負っているのだと、理解してやっていると思う」

 17年のWBCに出現し、世界を驚かせたチーム・イスラエルには少し複雑な国事情が絡むのだが「今はまだイスラエルの人たちに、そもそも国代表の野球チームが存在することを知ってもらっている最中なんだけどね」と明るく笑うザックの人懐っこさに助けられ、話を続けられた。

 カリフォルニア州出身のユダヤ系アメリカ人であるザックがイスラエル国籍を取得したのは18年。オリンピアンになれるかもしれないという可能性にかけて取った手段だったが、代表チームはイスラエルの子供たちに野球クリニックを開いたり、寄付を募って球場の改修などにも尽力。少しでも野球人気をもたらそうと、草の根活動を続けている。

「僕のファミリーはもともと東ヨーロッパの出身。ホロコーストの後、兄弟の半分がイスラエル、残り半分がアメリカに渡ったんだ。だから親戚がイスラエルにいたりするけど、代表入りしたことで、ユダヤ系アメリカ人であることの誇りや感謝の気持ちが強くなった」と明かしたザックは、イスラエル球界の現状をこう語る。

「アメリカ人ばかりのチームだって思われているけど、イスラエルの野球も少しずつ成長しているんだよ。リトルリーグもできたし、新しいスタジアムも造った。サッカーとバスケの人気が根強いイスラエルで、お金を募ってフィールドを造り上げるって、なかなかアンビシャスなゴールだと思うんだけど、それができた。土広場で開催していた野球クリニックも、組織や施設を提供することでリーグができ、子供たちが野球ができるようになった。それだけでもこの情熱を続ける意義があると思うけど、いつか全員イスラエル生まれのイスラエルチームができるかもしれない。僕はそのきっかけの一人になれたらうれしい」

 ザックはオリンピックなどの国際試合は、スタッツや成績が仕事の有無に直結するメジャーに比べ「勝つことだけに全力」でいい分、夜は眠れ、自分の細かい点は気にしないでいいところが大きく違うと話していた。

「でもオリンピックではホームランを打たれすぎたから、もう少し打たれないのが理想かな。だって、球場が狭かったんだよ!」

 最後に笑わせてくれることも忘れなかったザック。イスラエルの1次ラウンドはドミニカ共和国、プエルトリコ、ベネズエラ、ニカラグアが集うプールD。マイアミの球場は日本より広いので、ここは本塁打ゼロを目指して頑張ってほしい。