【大下剛史・熱血球論】今季、阪神の試合を見たのは4試合だけだが、そんな私でもビックリした。長年の課題でもあった守備網が劇的な改善を見せているのだ。〝肝〟となったのは「中野―木浪」で構成する二遊間で間違いない。開幕からチーム失策数もリーグ最少。二遊間の2人は至ってはいまだにゼロだ。
中でも昨季まで正遊撃手だった中野を二塁へコンバートさせたのは、岡田彰布監督(65)の大英断と言える。遊撃手としての能力が今季、遊撃に入っている木浪と格段に劣っているわけではない。にもかかわらず〝改革〟を断行したのは、選手としての中野の将来を見据えてのものだ。
実は私にも同じ経験がある。中野と同じ東映でのプロ3年目。1年目から正遊撃手を務めていたにもかかわらず、その年に後に強肩の名遊撃手として慣らした大橋穣(東映→阪急)が入団。当時の松木謙治郎監督の方針で二塁へとコンバートされた。
当時は私も若く、レギュラーでもあったプライドから「何でや!?」という思いのほうが強かった。だが、その気持ちは中堅、ベテランと年数を重ねるとともに消え、指導者になったときには「ああ、あのときのコンバートがあったから12年も現役を続けられたんだ」とハッキリ確信するようになった。これは転向を命じられたときの当事者には、分からないもの。チームを勝たせるために、あるいは、その選手の将来を考え「何がベストか」をふかんして見る立場になってみない限り、見えてこないものでもある。
岡田監督もプロ入りは三塁手。その後、すぐに二塁へとコンバートされ、球史に残る二塁手として、一時代を築いた。いつの時代も捕手・二遊間のセンターラインは野球の要。単に走攻守が秀でているだけはなく、それなりの野球観やセンスを持っていなければ務まらない。岡田監督は中野を将来の内野のリーダーになれる人材として見込んでいるからこそ、中長期的なビジョンをもって、メスを入れたのだと思う。
一塁・大山、三塁・佐藤輝と内野のレギュラーは全員が20代。現時点だけなく、これが年間を通してハマれば、阪神はむこう5年は内野の防御網で悩まされるようなことはなくなる。阪神、オリックスを通じ、監督業はこれが3度目と豊富な経験値があるとはいえ、就任1年目から、勇気を持って手を入れた岡田監督の戦術眼はやはりさすがのひと言に尽きる。今年の虎は大きな浮き沈みの心配はなく、文字通り虎視眈々と頂点を狙えるチームになっている。(本紙専属評論家)













