上陸を今かと待っていたのは、熱狂的なファンだけではなかった。第5回WBCに臨む、侍ジャパン・大谷翔平投手(28=エンゼルス)が3日にチーム本隊に合流。中日との壮行試合(バンテリン)前に姿を現した際の球場の熱狂ぶりは、実にすさまじかった。ただ、スーパースターを「生で見たい」という思いは、高みを目指すプロ野球選手たちも同じだった。
もはやスポーツの枠を超えた国民的関心事と化している。大谷は1日にチャーター機で米国から帰国。この日の早朝に在日アメリカ大使館を電撃訪問した後、再びチャーター機で名古屋入りした。帰国の際も、今回の名古屋入りも、テレビ局が精力的に生中継する報道の過熱ぶりが、世間の関心度の高さをうかがわせた。それは何より日本国民が大谷のWBC参戦に心をときめかせ、その一挙手一投足に注目しているからに他ならない。
侍の戦闘服に袖を通す大谷を待ちわびていたのは、代表メンバーもNPBの現役プレーヤーたちも同じだった。先月末、宮崎で行われた侍ジャパン壮行試合のソフトバンク戦。侍首脳陣が懇願していたメジャー組の強化合宿参加がかなわず、大谷の姿もそこにはなかった。
「来ないんですね…。純粋に、生で見てみたかったです。僕は特に試合前のフリー打撃を見てみたいと思っていました」
大谷の合宿不参加が決まった直後、そう漏らしていたのはソフトバンクの上林誠知外野手(27)だった。メジャーでも屈指の長距離砲として席巻する超一流打者を拝めるチャンスは、NPBではなかなか巡り合えない。じっくり「見たい」という純粋な気持ちは、高みを目指す野球人としての「刺激」を求めてのものに違いなかった。
ともに日の丸を背負う侍メンバーも、合流の時を楽しみにしていた。日本ハム時代から大谷と懇意の仲で、互いを認め合う近藤健介外野手(29=ソフトバンク)は盟友との再会を前にこう語っていた。
「(今は)ファンの感覚で見ている部分がある。日本でプレーしていた時の感覚や考え方からアメリカに行ってどう変わっているのか、そういうところに興味があります」
オフのトレーニングなどとはまた違う。嗅覚や感覚を研ぎすました状態で合流してくる〝本気の大谷〟を、息づかいが伝わる距離でチェックできる好機を侍たちも待っていた。
大谷はこの日「個の集結が一番いい形になる。個人個人が100%をグラウンドの中で出せるかどうかが一番のチームワーク。まずは自分の調整をこなしていく。その中で僕に対して信頼を示してくれる選手が出てきてくれると思う」と、大会直前の合流に決意を込めた。
9日に迫った1次ラウンド初戦・中国戦の先発が濃厚で、二刀流での出陣に意欲を示している。目の色を変えてやってきた大谷は、4日の中日戦前の練習に本格的に参加し、6日の強化試合・阪神戦、7日の同・オリックス戦を経て本番に臨む。これ以上ない「衝撃」と「刺激」を受けるプロは多いはずだ。
文字通り360度、幾多の視線に囲まれる大谷。待ちわびた分、その視線の熱量は熱い。












