常に個人よりもチームを重んじてきた男らしい真意があった。ソフトバンク・柳田悠岐外野手(34)が19日、広島・呉での自主トレを公開。練習後に今春開催のWBC出場を辞退したことを明かした。「身も心も100%に持っていけるかっていうのが難しい状態でした。体がですね。そこに100に持っていって、自分の体がそこからっていうのがイメージしづらかった」。栗山監督率いる代表首脳陣と密にコンタクトを取りつつ、熟考した上での判断。「もちろん出たい気持ちもあった」が、己の決断に後悔は一切ない。

 柳田の生きざま、そのものだった。「使う方にも迷惑がかかる」。万全の状態でグラウンドに立てるかを自問自答した。〝出たいから呼ばれれば行く、動けるから行く〟という選択肢はなかった。自身の起用幅をイメージして、代表に制約がかかることはプラスに働かないという判断が一番にあった。一昨年の東京五輪では金メダル獲得に大きく貢献。国際試合の難しさを肌で知る。一つの代表枠がいかに重要で、用兵を担う側の気苦労を重々理解している。東京五輪の準々決勝・アメリカ戦で進塁打を打って少年のように喜びを表現した男。「フォア・ザ・チーム」を体現してきた柳田らしい、日の丸への敬意と世界一を目指す侍ジャパンへのもう一つの忠誠の示し方だった。

 ソフトバンクの主将にして主砲、精神的支柱でもある。性格的に無理や自己犠牲をいとわないタイプ。そんな姿勢が野球界に広く認められ、他球団を含めた後輩たちの尊敬を集めてきた。WBC参加なら、後先考えず身を粉にして戦う姿が容易に想像できる。35歳を迎える今季が長期7年契約の4年目。侍とともに忠誠を尽くす鷹を先導する責任と使命も同時にある。多くを語ることはないが、総合的判断の裏には熟考の跡があった。

 侍の用兵にまで考えを巡らした、一本気な男らしい選択――。筋を通して、プロ13年目のシーズンを迎える。