【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】年内最後のコラムは、今年一番衝撃だったかもしれないジャレド・ウォルシュのファンレターにまつわるインタビュー。
エンゼルスのクラブハウスにいると、大谷翔平投手(28)のところにはいつも山のように届け物があり、他の選手はどうなのだろうと何げなくジャレドに聞いたのがきっかけだった。
「たくさんのすてきなファンレターをもらったけど、あるファンが、試合前の食事は何が好き? 音楽は何を聴く? ルーティンはどんなの? って聞いてきたものが一番うれしかったね。ファンたちに僕らのことをもう少し知ってもらえるって」
日ごろから裏表がなく素直な返答をくれるジャレドだが、時々天然だな、と思うことがある。この時も「ああ、手紙が来たから返事を書いて送ったよ」と、あたかも当たり前のことのように話を進めていく。
「たくさん手紙をもらうんだけど、オフにジョージア州の実家に帰ると、母が返事しなさいって箱いっぱい持ってくるんだ。僕のADD(注意欠陥障害)はかなりひどいから、4時間座ってファンレターに返事を書くのは至難の業なんだよね」
実家に手紙? ADD?
「ADDは今や携帯みたいに皆なんかしら持っているでしょ? ああ、手紙にはできるだけ返事を書くようにしているよ。どうやって皆が住所を調べているかは分からない…確かにそれだけが唯一ためらわれるところだよね。失礼にしたくないけど、返事をしたらそこが僕の家ですって認めているみたいなものでしょ? ちゃんと伝えたいのは、皆のサポートに感謝しているし、自分の仕事にも誇りを持っているけど、プライバシーも欲しいなって。スタジアムに送ってくれたら、なるべく返事をするように頑張るからって」
ジャレドの母リサさんが、住所を知られることが怖くないのか、気になる方も多いと思う。
「母はどちらかというとエキサイトしているよ。息子が大リーグでプレーする機会をもらえたから、その僕が謙虚でいるように、ファンたちに常に感謝を忘れないようにってできる限り返事を書かせようとする。僕もできる限りそうしているんだけど、時々大変」
そりゃ、そうだ。毎年数百通、少なくとも1000通近くは返事をしているという。
「いつもたくさん渡されるから、実際の数は分からない。中には空白の紙を送ってくる人がいて、それにはサインしないようにしている。サインを盗んでどこかに貼り付けたりするかもしれないでしょ? でも、子供たちのファンレターはいつだってスペシャル。僕もそんなプロの野球選手にどうやったらプロ入りできるか聞きたくて仕方ない野球少年の一人だったから」
野球選手も大変だな、と思っていると、ジャレドはまったく意に介さない様子で「エンゼルスは2018年から、ショーヘイのおかげでとてもグローバルなチームになったと思う。日本からもファンメールをもらうようになったけど、アメリカ以外の国の人が僕らの野球を見て手紙を書いてくれるってどこか特別な気持ちになるんだ。日本から『英語が下手でごめんなさい』と言いながら一生懸命書いたであろう手書きのレターには感動したよ」。
ある選手が「米国は比較的、サインやボールなど何かを求めるものが多いけど、日本のファンは贈り物という形で送ってくることが多い気がする。ショーヘイのおかげでファンの在り方でも文化の違いを感じるようになったよ」と言っていたのを思い出した。エンゼルスでは、よく日本のお菓子が出回っているが、日本のファンの心遣いを感じる瞬間だ。
さて、例年だと今ごろ、机に向かって返事を書いているジャレドだが…。
「ちょうど春に母が引っ越したんだ。果たして今オフも手紙が届くのか、これは少し興味深いね」
プライバシーは守りたいところだが、ファンを大切にしている選手たちは多い。
☆ジャレド・ウォルシュ 1993年7月30日生まれ。29歳。米国ウィスコンシン州出身。182センチ、95キロ。左投げ左打ちの外野手、一塁手、投手。2015年MLBドラフト39巡目(全体1185位)でエンゼルスから指名されプロ入り。19年5月にメジャーデビューし、同年野手として31試合に出場した一方で投手としても5試合に登板した。20年以降は野手に専念し、同年32試合出場で打率2割9分3厘、9本塁打。21年はチームの主力選手に成長し144試合で打率2割7分7厘、29本塁打、98打点。球宴にも初出場。22年は負傷者リスト入りしたこともあって118試合の出場にとどまった。












