1日に死去した〝燃える闘魂〟アントニオ猪木さん(享年79)の追悼連載「猪木自身が語った名勝負10番」第5回。生前の猪木さんは〝最大の宿敵〟との大抗争の裏にあった、秘話を語っていた。

【猪木自身が語った名勝負10番(5)】アントニオ猪木が激しい抗争を繰り広げた外国人選手の筆頭といえば、〝狂虎〟タイガー・ジェット・シンだろう。

 1973年5月に新日本プロレスに初来日すると、同年11月5日には妻の女優・倍賞美津子さんと買い物途中だった猪木さんを襲撃した伝説の「新宿伊勢丹前襲撃事件」を起こした。

 74年6月26日には大阪府立体育会館でNWF世界ヘビー級王座をかけて戦い、猪木が腕折りで肩を脱臼させてレフェリーストップ勝ちを収めた。

 猪木さんは、シンについて「今だから言えるけど、よく化けたね、こいつは。本業がよく分からないようないろんな人が出入りしている中で、その中の一人が1枚の写真を持ってきたんだ。そしたら小さな刀をくわえていてね。『こんなんじゃ迫力ねえじゃん』って俺が言って、サーベル買ってきたらサマになったんだ」と、〝狂虎〟のキャラクターは自らプロデュースしていたと告白。「そのおかげでいまだにキズが何か所かありますけど。ムッフッフ…」と笑った。

 シンは「いい感性で、自分の役割をしっかりと演じ切るというか。そしてその先に行った部分もあるしね」と想定以上の成長を遂げたとした上で「やばい時が何回かありましたよ。イスを投げられて普通はリングのロープに引っかかるのが引っかからないで、そのままバーンといって。頭をどっかにぶつけた」とその気性の荒さを懐かしんだ。

▽NWF世界ヘビー級選手権(60分3本勝負)

〈王者〉
〇アントニオ猪木
2―1
〈挑戦者〉
タイガー・ジェット・シン●
①猪木
11分25秒
両者リングアウト
シン
②猪木
9分46秒
レフェリーストップ
シン
(1974年6月26日 新日本プロレス・大阪府立体育会館)