【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】ここ数日間、ロサンゼルスで珍しく雨がパラついた。日頃あまり季節感のない西海岸で、秋を感じる瞬間。
執筆中の今もサンディエゴで雨が降っているが、パドレスがドジャースとの地区シリーズを制覇し、次のステージに駒を進めたので、コロナ禍がうそだったかのような渋滞に悪態をつきながら通った、今季のエンゼル・スタジアムとドジャー・スタジアムでの取材も終了。日程が読めない10月はどこかせわしないのだが、終わってしまうとどこか寂しく、年々疲労がたまりやすくなってきた体に秋の夜風がやたら冷たく感じたりする。
この1~2週間、クラブハウスで選手らがロッカーを片付けるところを眺めてきた。
知的でこだわりが強く、質問にはいつも丁寧に答えてくれたエンゼルス先発投手陣のリーダー的存在マイケル・ロレンゼンのロッカーはやたら物が多く、最後の遠征先から直接自宅に帰るため「なんでこんなに物が多いんだろう。数日前からやっとくべきだったよね。いつになっても学ばないわ」なんてぼやきながら箱詰めしていた。
物の多さでは恐らくチームで1、2番を争うアーチー・ブラッドリーは、案外早く荷造りを済ませていたが「まずい。結婚指輪をなくした!」とせっかくきれいに詰めた荷物をあさっていた。「実は2個目なんだよね。妻はすでに慣れているから、きっと分かってくれる」なんて言いながらも必死になっていた姿がほほ笑ましかった。やたらフレンドリーでおしゃべりな彼は大谷翔平とロッカーが隣で、シーズン中によく大谷から日本のお菓子を分けてもらっていた。ポッキーがお気に入りで「うまい棒」のことを「1つしか入っていない大きなチートス」だと言った時は大笑いした。
まったり系で地元民のデビッド・フレッチャーは、シーズン終了後に戻ってくるからと、チームメートらを眺めながら感慨にふけっていた。大谷の荷物も残っていたから、後で片付けに来たのだろう。
今季、クラブハウスで最後にゆっくり話ができたのは、アスレチックスのトニー・ケンプだった。ア軍にとっても苦しいシーズンだったが、トニーは9月にメジャーに上がってきた若手選手らに「コーヒーは足りてらっしゃいますか? 砂糖やクリームは必要ありませんか」とわざと仰々しく飲み物を運び「ルーキーたちがリラックスしすぎないようにしないとね」などとからかって笑い合っていた。
実に自然体に真面目な話もしてくれる人で「最近は本気で、家族と公園に行くのが一番の楽しみなんだ。携帯を置いて、シーズン中にはできないゆっくりした時間。妻の出産に立ち会い、娘の成長を見ていたら、すっかり人生観が変わって。人生、野球以外にもいろいろあると思うと同時に、野球により感謝するようになったり。タフな試合の後に見られる娘の寝顔に癒やされたり」。ナッシュビルで待つ生後9か月の娘マケナちゃんと会えるのを心から楽しみにしていた。
「ここ数か月、直接会えなくてつらかった! あと1~2か月で歩き始めると思うから、それには間に合いそうだ」
トニーがあまりに話しやすく、思わず「プレーオフに行けることと、娘さんの最初の一歩、選ばなければならなかったらどちらを選ぶ?」と聞いてしまったのだが、笑いながらも真剣に考え「プレーオフに出ることかな。この仕事をしている以上、娘の大事な瞬間を見逃すことが出てくるのは覚悟しているから。プレーオフは、その犠牲を払ってもいいことだと思う」。
やはり、終わってしまうと少し寂しい。












