〝プロレスリングマスター〟武藤敬司(59)のレスラー人生が最終章に突入だ。ノア&DDT&東京女子プロレス&ガンバレ☆プロレスによる4団体合同興行「サイバーファイトフェスティバル2022」(12日、さいたまスーパーアリーナ)に登場し、2023年春までに現役を引退すると発表。「左股関節唇損傷」による約4か月の欠場を経て5月に復帰したばかりだが、思うような動きができず決断した。最後の戦いに臨むプロレスの天才は緊急直撃に応じ、その胸中を明かした。

 ――引退を決めた最大の理由は

 武藤 ドクターストップだ。ぶっちゃけ、ドクターとの信頼関係でやっている中で、こっちもプロレスラーだから5カウント以内の〝反則〟は許されるつもりでやってきたんだ。例えば「やったらダメだ」って言われていたムーンサルトを(昨年6月のサイバーフェスで)やったりとかさ。だけど世の中、プロレスのルールばっかりじゃなかったってことだよ…。

 ――来春までという期限を決めたのはなぜか

 武藤 本当は辞めたくないんだよ。でもその中で、できる限りの試合をしたい。残せることは残したい、ノアでね。だからですよ。少しは貢献したいじゃん。きっとノアだって、まだまだこれからビッグマッチがあると思うんだよ。そこで俺の「限られた試合」ってのがあれば、少しは〝引き〟になるだろ?

 ――引退ロードはどのようなものにしたいか

 武藤 まだ何も決めてねえよ。なかなか(世代的に)横とか上とかいないしね。会場だって決まってないんだから。まあ、みんなが喜ぶものをできればと。

 ――引退試合で希望の相手は。かつては蝶野正洋の名を挙げたことも

 武藤 今は蝶野のことは考えてないな。蝶野もまだ体調が大変そうじゃん。(引退試合に)来てはもらいたいと思ってるけどね。海外の選手? いやー、もう向こうにもいないよ。アメリカの試合見ても、俺が知ってるのほとんどいないもん。そうなんだよ、いねえんだよなあ…。ただ、未来につなげていきたいと思うよ。だって、ノアでも最近引退した人っていないだろ?

 ――確かに、大々的に「引退ロード」と銘打つようなことはなかった

 武藤 だろ? で、今、ノアで50代の選手がいっぱい活躍している中でさ、そいつらの見本となるような引退をしていきたいんだよね。後にみんなが続けられるようにさ。「令和の時代にあった新しい引退ロード」を俺がつくれたらいいよな。そこに他団体の選手も参加してくれるなら、それはそれでいいしさ。

 ――「令和の引退ロード」では若い選手とも戦いたいか

 武藤 両方だよな。思い出と若い選手と。プロレスっていうのは思い出に残ったりするわけだから。でも厳選していかないといけないよな。アイツとやったから、コイツともやらなきゃ…とかやってたらキリがないじゃん。今、特にやっておきたい相手? だから、それがいないんだよ。もしかしたら少し、そういう「やりたい相手」がいなくなってるっていうのも(引退の理由に)あるのかもしれねえよな。

 ――還暦で赤いベルト(GHCナショナル王座)戴冠という目標は

 武藤 そういうのは、もういいかな。会社も多分、俺の体に気を使うと思うんだよ。レスラーだから大谷(晋二郎)の件(※注)も気になったりするしさ。何かあった時に迷惑をかけちまうっていう気持ちもあるしさ。

 ――大谷選手のアクシデントも決断に影響したと

 武藤 そういうのもあるよ。それだけじゃないけど。日常生活が大変になってきているのもあるし、長州力との温泉ツアーだってしんどくなってきてるからさ。

 ――ちなみに化身のグレート・ムタはどうなるのか

 武藤 おそらく、魔界の門が開かなくなる。もう1、2回開いたら閉じて、ムタも来れなくなる気がするよ。

※注=大谷は4月10日のゼロワン両国大会でノアの杉浦貴と対戦。ジャーマンでコーナーに叩きつけられた直後に動かなくなり、救急搬送された。専門医の診断検査は「頸髄損傷」。現在も自分の意思では体を動かすことも、思い通りに言葉を発することもできない。

【レジェンドにふさわしい舞台を用意】ノアは団体総出で大ベテランの決断をバックアップする。

 ノアを統括するサイバーファイト取締役で、武藤とは新日本プロレス時代から親密な関係にある武田有弘氏は「武藤さんの最後にふさわしい場をつくります。我々にできることは何でもするつもり」と語った。引退試合の会場についても「ドームクラスもあり得ると思います」とし、日本のプロレス界をけん引してきたレジェンドにふさわしい舞台を用意するつもりだ。

 引退までの試合数については、武藤の意向と医師の判断を聞きながら判断するとした上で「5~6試合くらいになると思います」と見通しを語る。武藤自身が「令和の引退ロードの手本になれば」と話していることについて、武田氏は「もちろん協力します。我々としては武藤さんのアイデアをできる限り実現させていくつもりです」と約束した。

☆むとう・けいじ 1962年12月23日生まれ、山梨・富士吉田市出身。84年10月5日の新日本プロレス越谷大会でデビュー。蝶野正洋、故橋本真也さんとの闘魂三銃士で90年代の新日マットをけん引し、化身のグレート・ムタは海外でも人気を博した。その後は全日本プロレス、W―1、フリーを経て2021年2月にノア入団。得意技はシャイニングウィザード。188センチ、110キロ。