元局アナ 青池奈津子の「メジャーオフ通信」特別編(3)

 ドジャースの前田健太投手(29)はメジャー2年目で初めてワールドシリーズ(WS)のマウンドに上がった。残念ながら世界一に届かなかったが最高の舞台での経験は2018年の飛躍につながるはずだ。見守っていた妻・早穂さんも大きな財産を得ていた。

「応援するというのも大事なプロセスのひとつなのだな、と知った一年でした」

 早穂さんはメジャー1年目、日本とは違う家族の野球との関わり方に戸惑ったり面食らった話をしてくれたのだがWSを経験したことで全く違う感覚を身につけていた。

「これまで栄養管理をしながらご飯作りをして、メンタルのサポートをすることが一番大事だと思っていたんですけど、奥さんたちが前面に立って応援しているのも結局彼らのパワーになってるんだなって」。それに気づいたのは言葉ではなくアクションだった。

「だって、試合が終わった後、どの選手も家族のところを見て手を振って、投げキスしたり、ありがとうってジェスチャーしたりしているんです。一番気にかけている。それも大事だよね、だから応援するんだって。応援することの大切さを知った2年目でしたし、それがきっかけで奥さん同士もまたさらに絆が深くなりました」

 早穂さんには、夫がメジャー入りした時から決めていることがある。

 一般的に、メジャーの移籍交渉は家族同伴だ。つまり、家族を含めての人となりも評価の対象になるということ。だからこそ「自分ができる貢献はしよう」と、ドジャース奥様会の集まりやチャリティー活動には拙い英語であろうとも可能な限り顔を出した。

「そういうことをやることで『あー、ケンタの奥さんがやってくれた』って思ってくれて、選手の方もチームになじむきっかけになるといいなって。そうそう、17年はすごくハードなチャリティーがあったんです。すごい炎天下で、ペンキ塗り6時間!」

 ドジャース・ファンデーションが指揮を執って行われたチャリティーはなんとカリフォルニア州ロングビーチでの「家作り」。人生初のペンキ塗りに全身汗と泥まみれになりながらも思いのほか楽しかったそうだ。

 テキサス州ヒューストンが台風被害に遭った時、奥様会自らチームに掛け合って球場で募金活動なども行っている。積極的に参加することで米国には米国なりの支え方がある、とわかってきたメジャー2年目。1年目は「楽しむ余裕が全くなかった」と話していた。

「相変わらず水漏れとかありますけどね。車のタイヤなんてパンク3回。でもちょっとやそっとのことでは…免疫ついちゃいました」

 ほほ笑む彼女の表情は充実感に満ちていた。

 そういえば、前田投手はジェスチャーをしたのか。「ワールドシリーズ第6戦だったかな。1回だけ気づいて手を振ってくれましたよ」。さすがに投げキスはなかったそうだ。

 また、WS敗戦直後のインタビューで前田投手が「プレッシャーのない目覚ましで起きたい」と言ったことを伝えると「そこまで張り詰めているとは思っていなかったです。それを見せない夫の心の強さに驚き」と、早穂さんは目を丸くした。

「でも興奮もしていたんじゃないかな。プレッシャーもあった半面、ワクワクというか、絶対チャンピオンになりたい!って思っていたでしょうから。結果的に負けてしまったけれど、1年目のプレーオフは結構打たれたりして苦い思い出もあったので、(先発から救援で)ポジションは違うけれど、リベンジできたのはいい自信になったんじゃないかなって思います」

 2年目を振り返り終えて大きく息を吐いた早穂さん。「燃え尽きちゃいました。これ、回復には時間かかりそうですね…。日本で心身ともに整えて、また来季に向けて頑張ります」。日本で存分に英気を養っているだろうか。本当にお疲れさまでした。3年目の今年の進化も期待していますよ!

 ☆まえだ・さほ 1985年7月19日、千葉県生まれ。フェリス女学院大時代、テレビ神奈川「みんなが出るテレビ」でリポーターを務める。在学中に「ジュニア・ベジタブル&フルーツマイスター」の資格を取得。2008年4月、東海テレビにアナウンサーとして入社。10年10月末に退社後、フリーに転向。15年2月、初のレシピ本「前田家の食卓」(幻冬舎)出版。