ついに新庄ファイターズがベールを脱いだ。日本ハム・新庄剛志新監督(50)の初陣となった8日の古巣阪神との練習試合(沖縄・宜野座)は6―2で快勝。内野手を外野、外野手を内野で起用するなど〝らしさ満開〟の戦いぶりを見せた。試合を見守ったビッグボスの恩師で、野球評論家の柏原純一氏は投手陣の成長に着目。監督就任から3か月ほどで確実に新庄イズムが浸透していることを確信した。
【柏原純一「烈眼」】新庄ビッグボスも内心はホッとしているんじゃないかなと思う。練習試合とはいえ勝負事。プロである以上は勝って終わりたいものだ。
先発メンバーの多くを内野手は外野に、外野手は内野にと本職ではないポジションに配した。その緊張感がいい方向に働いていたのだろう。野手陣の足がよく動いていたのが印象的だった。攻撃は初回から活発で、先制→中押し→ダメ押しと効果的に得点し、6―2で初陣を飾った。
キャンプもまだ序盤を終えたばかり。打った野手や、抑えた投手を結果だけで評価する時期でもない。それでも「おっ、やるな」と思った点が一つある。投手陣にもビッグボスの〝イズム〟が浸透していたことだ。
両軍の得点差は、そのまま四球数の差でもあった。阪神が4回までに4四球を与えたのに対し、日本ハムは6投手で無四球。この点については新庄監督も手応えを感じたことだろう。
まだ直接本人から聞いたわけではないが、常に「前向きな失敗はOK」というポジティブシンキングがビッグボスの信条だ。試合前までに「四球だけは絶対ダメ! 歩かせるぐらいならストライクゾーンで勝負して打たれたほうが絶対にいい」ぐらいのことは言っていただろう。
投げていたのは、これから日本ハム投手陣の屋台骨を担わなければならない投手たち。新庄監督が求めていたのは、結果を優先して勝負を避ける姿ではなく、勝負に行って痛い目に遭っても、そこから学ぶことだったに違いない。その思考に選手たちのベクトルが向いていたことは評価に値する。
象徴的だったのは6回から4番手で登板した左腕・上原健太(27)の投球だ。一死走者なしの場面で迎えたのは4番で昨季24本塁打の佐藤輝。しかも、初回の適時打を含めて2打数2安打と結果を出していた。そんな好調の長距離砲に対し、上原はフルカウントから146キロの外角直球で見逃し三振を奪った。
2015年のドラフト1位ながら、過去6年で7勝止まり。昨年は5年ぶりに未勝利で、勝負がかかる今季は二刀流に挑戦している。心情を察するに、喉から手が出るほど結果は欲しいはずだ。しかも次打者は糸井に代わって途中出場していた一軍実績のない遠藤。0点に抑えることだけを考えれば、佐藤輝との勝負を避ける手もあったが、上原は191センチの長身を目いっぱい使い、渾身の1球で勝負に勝った。
新庄監督が選手たちに感じてもらいたかったものは、こうした成功体験なのではないか。この日の日本ハム投手陣でフルカウントにしたのは、4投手で計5度。それでも上原を含めて、いずれのケースでも投手が踏ん張り、歩かせることなくアウトを奪った。ささいなことのように思われるかもしれないが、こういう積み重ねこそ大事になる。
新庄監督は野手出身。就任してからの奇抜な言動も含め、生き残りをかける選手の中には「本当にこの人の言うことを聞いて大丈夫だろうか…」と疑心暗鬼になっていた選手がいても不思議ではない。ただ、実戦で内容の伴った結果を出すことで「この人で自分は変われるかもしれない」と考えも変わることだろう。ビッグボスにとっても、選手にとっても、目指すべき方向性を共有していく上で「大きな1勝」となったはずだ。(野球評論家)












