3・8東京ドームは野球という競技が持つ特別な重みと、春の訪れを告げるような華やかさに包まれていた。第6回WBC1次ラウンドC組で侍ジャパンは8日、オーストラリア戦に臨み、4―3で逆転勝ち。同組1位突破を決めた。
この日は天皇、皇后両陛下と長女の愛子内親王殿下がご来場される「天覧試合」として執り行われた。国際大会での天覧試合は1966年11月6日の全日本対ドジャース戦以来、実に60年ぶりの歴史的な出来事。試合開始の約30分前、大型ビジョンに貴賓席へとお出ましになった両陛下と愛子さまのお姿が映し出されると、満員のスタンドからは地鳴りのようなどよめきと、温かな拍手が沸き起こった。
試合前の会見では日本の4番・吉田正尚外野手(32=レッドソックス)が「日本国民として素晴らしい一日になるようにプレーしたい」と背筋を伸ばしながらコメント。井端弘和監督(50)もまた、半世紀以上の時をつなぐ歴史の重圧を背負いながらも「ゲーム終了まで気を引き締め、日本らしい野球をしたい」と必勝を誓ってグラウンドへ向かった。
試合は1点を追う展開が続く緊迫した攻防。7回に好機で打席に立った吉田が右翼席へ逆転2ランを放ち、まさに試合前の言葉通りに「有言実行」の姿勢を見せつけ、チームに劇的勝利を呼び寄せた。
試合終了後、グラウンドには勝敗を超越した崇高な光景も広がった。整列した侍ジャパンの選手たちは、大谷翔平(31=ドジャース)をはじめ全員が帽子を取り、貴賓席を見上げて敬意を込めた拍手を送った。敗れたオーストラリアの選手たちもまた、その列に加わり、日本の皇室へ向けて深く一礼を捧げた。その瞬間、スタンドのファンもグラウンドの喧騒を忘れ、穏やかに手を振られる両陛下と愛子さまのお姿に万雷の拍手で応えた。
井端監督は試合後の会見で「60年ぶりというところで本当に勝たないといけないと思っていた。何とか勝てて喜びを感じる」と、大役を果たした安堵の表情を浮かべた。
決戦の夜に刻まれたのは、単なる勝敗の記録だけではない。国境を超えた敬意と60年の時をつないだ野球文化の奥行きが、聖地・東京ドームにおいて「現代の叙事詩」として結実する歴史的行事となった。













