【橘高淳 審眼(51)】リクエスト制度が導入された後、得点機や試合を左右するようなクロスプレーに関して、ビデオ検証で客観的な視点から判定することが可能になりました。ただ、リスクエストを受け付けた時の状況によっては、非常に判断が難しいケースもあることは確かです。
野球好きの方なら想像できるかと思いますが、二死満塁でカウント3ボール2ストライクの場面を思い浮かべてみてください。このケースでは投手が投球すると同時に、全ての走者が一斉にスタートを切ります。ここで打者が一、二塁間へ安打性のゴロを打ったとしましょう。
二塁手が懸命に捕球して一塁に送球。間一髪でセーフなのかアウトなのか。微妙なタイミングながら一塁塁審の判定はアウトといった状況です。攻撃側の監督はベンチから出て、リクエストを要求するジェスチャーを送ります。そして、ビデオ検証が行われます。その結果、判定通りアウトのままなら無得点でイニングが終了し、試合が進行していくことになります。
ただ、リクエストの結果が判定変更でセーフだった場合はどうでしょうか。打者走者の一塁セーフはいいとしても、走者は一斉にスタートしているわけです。一塁上の判定でクロスプレーの上にリクエストとなる状況であれば、三塁走者に続いてスタートを切っていた二塁走者も本塁に生還している可能性が高いでしょう。特に勝負を決するような場面では走塁のスペシャリストが代走で起用されていることが多いはずです。
野球の常識を知っている方であれば、二塁走者も本塁にかえっていると想像すると思います。そこまで足が速くない走者だったとしても、そこはプロ野球選手です。一塁がセーフのままプレーが流れていれば、2点が入る公算が大きくなると考える方が普通だと思います。
しかし、リクエストによって一塁アウトの判定がセーフに覆った場合、走者はそれぞれの塁に戻り、1点が入って再び二死満塁の形でプレーが再開されます。これは全ての選手の動きを決めつけられないという理由に基づいています。セーフ判定なら一塁手は本塁に向かう走者にプレーしますが、アウト判定では次のプレーをしないですしね。
こうしたさまざまな状況を踏まえ、リクエストの対象とするのか、対象外とするのかが精査されて決まっています。そうした点はもっとNPBから発信されてしかるべきですし、マスコミ各社の皆さんも積極的に取り上げてもらえれば、ファンの方々への周知にも役立つと考えています。
解説者の方々にしても、リクエストを運用するルールをどれだけ明確に把握されているかは怪しいと思います。テレビ局、野球中継を行うメディアの方々が責任を持って発信してもらう方が親切なのではないかと思っています。
審判員時代は何でもかんでもグラウンドで「説明しろ、説明しろ」と言われてきました。私はグラウンドのマイクを通じて説明することは嫌ではありましたが、比較的得意な方でした。
ただ、4万人や5万人の観衆がいる前でマイクを握ることはやはり勇気がいることです。判定の結果を聞いた場内が沸くこともあれば、怒号に包まれることもあります。場内放送は厳密に言えば審判員の仕事ではありません。MLBで実際にされていますか? 審判員に代わる場内放送やマスコミの皆さんからの発信もあれば、よりいいかと思いますがいかがでしょうか。












