【橘高淳 審眼(50)】2019年5月4日、広島―巨人戦(マツダスタジアム)での出来事です。広島の初回裏の攻撃で一死から菊池涼介選手が遊撃へ強いライナー性の打球を打ちました。

 遊撃・坂本勇人選手はその打球をはじいたのですが、素早く拾って一塁へ送球。ただ、その送球が高く浮き、一塁・中島宏之選手がジャンプして捕球したものの、ベースから足が離れてこの時点ではセーフの状態となりました。

 打者走者の菊池選手は中島選手との交錯を避けようとフェアゾーンへ駆け抜けた上に転倒。その後、菊池選手は慌てて起き上がり一塁へヘッドスライディングで戻るも、一塁・中島選手にタッチされ、一塁塁審だった私はアウトを宣告しました(記録は遊ゴロ失策と打者走者の走塁死)。

 私は打者走者の菊池選手がパッと二塁への進塁をうかがって動いたように見えたんです。もちろん、審判としては絶対にバッターランナーの動きを見ますから。私としては何らかの動きを感じたということです。

 フェアゾーンにオーバーランをしてしまったとしても、二塁への進塁の意思を示さない場合は、そのまま平然と一塁に戻れば問題ありません。このプレーでは、一塁に帰塁しなければアウトになると思ったのか、菊池選手は塁に頭から戻るも一塁手からタッチされアウトという形になりました。

 このプレーに関し、広島・緒方監督から抗議を受けました。ただ、菊池選手が二塁をうかがったかどうかというのは、こちらのジャッジメントが最終判断となるため、リクエストの対象外なんです。菊池選手が一塁に帰塁した際のアウト判定へのリクエストという形でしか、ルール上は受けられないことを緒方監督には確認していました。

 さて、別室ではビデオ判定が進みます。その際、菊池選手は二塁をうかがう意思を見せてはないですがどうしますか?というやりとりもありました。私としては菊池選手のアウト判定を変えてもいいのではないかとも考えました。

 判定が覆っても巨人・原辰徳監督に説明すれば納得してもらえるのではないか。そう考えもしました。ですが、そこはリクエストの対象外。ルールブック上、私の判定を覆すことはできません。これは審判部の決め事です。

 グラウンドで下されたリクエストの結果は判定通りアウトです。すると、緒方監督は再びベンチを出て審判団に詰め寄りました。これは菊池選手が二塁をうかがったかどうかを含め、ビデオ判定で加味されるのでは、と緒方監督が考えていたからでしょう。しかし、リクエストで出た判定については抗議できないという取り決めがあり、緒方監督は退場という結果になりました。抗議による退場処分は新元号「令和」になって初めてということでした。

 いま現在も、このプレーはリクエストの対象にはなっていませんよね。腰が動いた、足が二塁に向いた、首が二塁方向を向いていたなど、そういった動きで客観的に判断する以外、打者走者が本当に二塁へ進む意思があるかないかなど、本人にしか分かりませんし、証明する術もありません。それを決めるのが審判員。判定に従ってもらうしかありません。