【橘高淳 審眼(52)】2022年4月10日、ZOZOマリンスタジアムで行われたロッテ―オリックス戦。ロッテ先発の佐々木朗希投手が「完全試合」を達成しました。もちろん、佐々木投手がプロ野球界で話題のすごい投手であることは知っていました。

 ですが、試合前から「完全試合」という未来が訪れることなど予想できるはずもありません。他の試合と同様、球審としてフラットな気持ちで試合に臨んだ記憶があります。

 ただ、実際に試合に入ってみると佐々木投手のボールは速かったですね。球質で言うとメジャーリーグのパドレス・ダルビッシュ有投手と、ドジャースの大谷翔平投手の真ん中くらいという印象でしょうか。ダルビッシュ投手は「シュ、シュ、シューッ」と切れ味抜群のボールが来る。大谷投手の場合は「ズドーン!」と来るイメージですが、佐々木投手はキレもあるし、ドンとも来る…。何となくお分かりいただけるでしょうか。

 とにかくあの日は佐々木投手が投げるボールが、オリックス打線のバットに当たりませんでした。ZOZOマリンでは、投手に対して向かい風が吹く時はフォークボールがよく落ちるといわれます。ですが、あの日は独特な風もなかったように記憶しています。野球をするには最高のコンディション。ジャケットを着れば快適かな、というくらいの気候でした。

 そんな中、佐々木投手の立ち上がりは先頭打者の後藤駿太選手を3球連続ファウルの後に二ゴロ。続くバレラ選手を見逃し、空振りで2ストライクと追い込んで一ゴロという内容でした。そして3番の吉田正尚選手に対しては見逃し、空振り、空振りで3球三振。無失点で初回の投球を終えると、ロッテ打線が直後の攻撃でオリックス先発・宮城大弥投手から高部瑛斗選手、藤原恭大選手の連続安打などで好機をつくり、4番・レアード選手の遊ゴロの間に1点を先制するという展開でした。

 ここから佐々木投手の勢いが増します。2回はラベロ選手、福田周平選手、西村凌選手から3者連続の空振り三振。3回も紅林弘太郎選手、福永奨選手、宜保翔選手から連続で空振り三振を奪います。この時点で打者9人から7奪三振です。

 さらに4回は後藤選手を空振り三振、バレラ選手を見逃し三振で仕留めて9者連続の奪三振。日本記録に並ぶと、続く吉田選手からも4球で空振り三振を奪い、10者連続奪三振の日本記録を樹立してしまいました。

 それでも佐々木投手の勢いは止まりませんでした。5回はラベロ選手を見逃し、福田選手を空振り、西村選手を見逃しで三振。13者連続奪三振とさらに記録を塗り替え、1―0でロッテがリードしたまま5回を終了し、試合は成立しました。

 どの試合でも5回終了時にはグラウンド整備が行われ、審判員は水分補給も兼ねて一度グラウンドを離れます。この時、審判員同士の会話で「(佐々木がノーヒットノーランか完全試合を)やるかも分からんで」と話題になりました。私自身も内心では「やるかもしれないな」と思いつつ、6回のオリックスの攻撃に向けて自分のポジションへ出ていきました。