全日本プロレスの前3冠ヘビー級王者・宮原健斗(31)が、西郷隆盛像にささげる復活Vを誓った。新型コロナウイルス感染拡大の影響で春からスライド開催される祭典「チャンピオン・カーニバル(CC)」(12日、名古屋国際会議場で開幕)を控え、2連覇に向けて闘志十分。再び王道マットの主役に躍り出る。

 全日本きってのナルシシズム男が、いつになく穏やかな表情だった。午後の東京・上野恩賜公園を散歩しながら取材に応じた宮原はCCに向け「優勝しか見ていません。目指すは2連覇? いや、史上2人目の3連覇です。だから今年は通り道にすぎない」と静かに闘志を燃やした。

 昨年は3冠王者として初優勝を果たし、今年はジャイアント馬場、スタン・ハンセン、鈴木みのるの3人しか成し遂げていない2連覇に挑む。目標とする3連覇は、馬場が1973年の第1回大会から75年にかけて達成したのが最初で最後となっている。

 この記録を念頭に、今年のCCを「歴史の転換点にする」と位置づける。「まず秋に開催されるのが歴史的じゃないですか。そこで優勝して歴史的記録に並ぶ足掛かりにします。歴史をつくるんです。宮原健斗らしいでしょ? だからここに来たんです」

 見上げたのは上野の象徴・西郷隆盛像だ。言わずと知れた明治維新の立役者で“西郷どん”の愛称で親しまれる。福岡県出身の宮原は、現在の鹿児島県にあたる薩摩藩出身の西郷について「同じ九州出身で今の日本の基礎をつくった伝説の人。何より閉塞感を打ち破って新たな時代を切り開いたじゃないですか。状況は違えど、僕もこのコロナで閉塞した時代をエンターテインメントの力で切り開きたい。だから西郷さんにパワーをもらいに来たんです。この像にはオーラがあるなあ」と語り、目を閉じた。

 ただし現実は甘くない。3月に諏訪魔(43)に3冠王座を奪われてからタイトルとは無縁で、8月30日後楽園大会では黒潮“イケメン”二郎(27)とのコンビで諏訪魔、石川修司(44)組の世界タッグ王座に挑戦し、完敗した。

「原因は明らかで、僕が声援を力にするタイプだからなんです。無観客やお客さんが声を出しにくい状況では力が出なかった。でもお客さんは手拍子や表情で応援してくれていたんです。『声なき応援を力に変えればいい』。今、西郷さんにそう言われた気がします。西郷さん! 僕はあなたのように逆境から何度でも立ち上がりますよ!」

 よく分からないが、これでスランプを脱したと主張し意気揚々と不忍池方面に歩いて行った。エース復活の祭典となるか注目だ。