今年のドラフトで成功した球団はどこか。元スカウトで本紙評論家の得津高宏氏がズバリ採点した。

「今年もパ・リーグがいい選手を引き当てたな、という印象ですね。なかでも一番はやはり、田中(創価大)を引き当てたソフトバンクでしょう。2位以降は好素材の高校生3人を早め早めで指名し、4人で指名を切り上げたのにも余裕を感じさせます。今年はいい捕手が少ないのに、九鬼(秀岳館)を3位でいかれたら、よそはほぞをかむしかない。ここは無理に指名をしなくても、二軍や育成にいい素材の選手はいくらでもいますから」

 ソフトバンクに続くのは、やはりパ・リーグのロッテだ。

「田中を外しても佐々木(桜美林大)が獲れたのは大きい。パイプの太い大阪ガスから2人指名していますが、これは信頼できる情報があったからこそだと思います。地元の島(東海大市原望洋)も大きく育てたい投手で、これは期待できます」

 3番手評価としたのはヤクルト、西武、楽天の3球団だ。

「1位で狙い通りの選手を単独で指名できたのはいいですね。その後の指名も想定通りにできたのではないでしょうか。ヤクルトの寺島、西武の今井、楽天の藤平とも1位に十分ふさわしい選手で、高校生とはいえ、それぞれのチーム事情から、すぐにチャンスが来るのではと思います。特に楽天はここ数年、高校生の1位指名が続いていますが、どんどんチャンスを与えていますし、いい素材の高校生をどんどん育てようという狙いがはっきりしていて好感が持てます」

 オリックス、中日も「悪くはないですね。オリックスはウエーバー順で最初でしたし、1位の山岡(東京ガス)は外れ1位でもよかったかなとは思いますが、2位の黒木(立正大)と1位級の即戦力投手2人を指名できたのは大きい。中日は柳(明大)の競合に勝てたし、今年は社会人を一人も指名しなかった。地元の吉川(中京学院大)は獲れませんでしたが、それを2位の京田(日大)でカバー。3位の高校生内野手の石垣(酒田南)も評判がいい。昨年までの社会人中心だったドラフトからの変化を感じます。これまでの反省もあるのかもしれません」

 可もなく不可もない…といった評価だったのは日本ハム、DeNA、広島だ。

「3球団とも1位競合を2度も外しましたが、うまくまとめたなという印象です。日本ハムの堀(広島新庄)は、高校生ながら貴重な左の中継ぎとしてすぐに使えそう。DeNAも即戦力で1位級の浜口(神奈川大)を指名できた。広島は2位で高橋(花咲徳栄)がよくぞ残っていたな、という感じ。捕手の坂倉(日大三)が確保できたのも大きいと思います」

 一方「失敗ドラフト」と見るのは巨人、阪神の2球団だという。

「巨人はとにかくクジ運が悪かったですね。投手2人を外して野手の吉川に行ったのは、球団が作製したリスト順からして仕方がなかったのかなと思いますが、即戦力で1位級の投手はやはり欲しかった。2位の畠(近大)も悪い投手ではないとは思いますが、まだ先に指名しておく選手がいたのではないか。大阪担当のスカウトは、去年の桜井(立命大)で失敗してますからプレッシャーがかかるでしょうね。左腕の池田(ヤマハ)は中継ぎで使うつもりなのでしょうが、胸を張って『補強できた』とは言えないドラフトだったと思います」

 阪神への評価はさらに手厳しい。

「ドラフト1位がすべてでしょうね。大山(白鴎大)は申し訳ないですけど、1位でなくても獲れた選手。そうした意見は阪神のスカウトからも出ていたはずです。ただ、現場の監督が『どうしても欲しい』となれば、その意見は優先されます。今回もおそらくそのケースだったのでは。『信念のあるドラフト』だったのかもしれませんが『上手なドラフト』でなかったのは間違いありません」

 最後に得津氏は総括としてこう振り返った。

「これだけ投手だらけのドラフトも珍しかったのでは。そのなかで少ない捕手、野手をきっちり獲得できた球団はうまい指名だったと思います。とはいえ、いずれもあくまで現時点でのことで、結果が出るのはしばらく先のこと。成功したかどうかは、その時になってみないと分かりませんが…」

 果たして来年の今ごろ、笑っている球団はどこか。

【得津氏の評価】

S   ソフトバンク

AAA ロッテ

AA  ヤクルト、西武、楽天

A   オリックス、中日

B   日本ハム、DeNA、広島

C   巨人

D   阪神