さらなる飛躍へ、阪神の沖縄・宜野座キャンプではバックネット付近が激熱スポットとなりそうだ。プロ2年目のキャンプを控えた佐藤輝明内野手(22)に、首脳陣から「期待の裏返し」とも言える猛ゲキが飛び交っている。

 すでに9日に井上ヘッドコーチとあいさつを交わした際には「今年は厳しくいくからな」と1年目の昨年にはない厳しい指導を予告された。もちろん、さらなる成長を願ってのことだが、鍛錬法にもキャンプではメスが入りそうだ。

 本人主導から首脳陣主導へと〝聖域解除〟となりそうなのが、フリー打撃前に各自がバックネット付近で行うティー打撃だ。昨年はシーズン中も含め、佐藤輝は大学時代からのルーティンでもある固定したスタンドティーにボールを置いてネットに向かって打つ、いわゆる「置きティー」で調整してきた。だが今年からは〝強制力〟を持って別のアプローチが施されることになる気配だ。

 その中身は、これまでのように自分の〝間〟で気持ち良く振るものではなく「気持ち良くない状態」でも打ち返さなくてはならないストレスのかかるもの。具体的なメニューとして挙がるのが、井上コーチが打撃担当時代からキャンプで行っている〝スリルティー〟。もう一つは北川打撃コーチが取り入れている通称・杉村ティーだ。

 前者は布袋寅泰の「スリル」のメロディーが球場BGMで流れた瞬間からトスのテンポが速くなり、曲が終わるまで振り続けるもの。高速ゆえに全身のスタミナが要求され、打撃における「振るスタミナ」を養うことが目的とされる。

 もう一つの「杉村――」はヤクルトの杉村打撃コーチ考案のメニューだ。北川コーチがヤクルトのコーチ時代にノウハウを学び、現在は若虎相手に実践している。こちらはトスの距離やテンポ、球の出どころなど、トス役が1球ごとに球の見え方を変え、打者は視覚的に揺さぶられた中でも反応し続けることが要求され「対応力」を磨かれる。打率3割、30本塁打、30盗塁のトリプルスリー3度を誇るヤクルト・山田がルーティンとしていることでも有名だ。体力・対応力に磨きをかける2つのアプローチは、いずれもやればやるほど体への負荷もかかり、根気強さが求められる。

 井上ヘッドコーチいわく、昨年の佐藤輝は「お客さん」だったが、2年目の今年は「超」がつくほどの指定強化選手。昨年は24本塁打で球団新人最多本塁打記録を更新したものの「もっとできたはず」が本人、首脳陣の一致した見解でもある。本格的な覚醒へ、今キャンプは〝限界〟と向き合う日々になりそうだ。