ド派手なパフォーマンスと堅実な野球観――。これこそが人を引きつけるマジックなのかもしれない。日本ハムの新監督、新庄剛志ビッグボス(49)が30日のファンフェスティバルに登場し、2006年の日本シリーズV以来、15年ぶりに本拠地・札幌ドームに姿を現した。わずか5分の〝顔見せ〟だったにもかかわらず、盛り上がりは最高潮に。来季への期待が大いに高まっているが、そんな新庄監督が〝やりたい野球〟とは…。


「雪をイメージした」という真っ白なランボルギーニのガルウイングを全開にし、ロックスターのように現れた新指揮官は「15年ぶりに北海道に帰ってきました。暴れてもいいですか? 感動させてもいいですか? 泣き笑いさせてもいいですか?」と用意してきた決めぜりふを語ると、ものの5分ほどで〝ステージ〟から去って行った。

 詰めかけた1万8215人のファンたちは、わずか5分程度の降壇にあぜんとさせられながらも「これが新庄」「新庄は自由でいい」と妙に納得しながら、この日の再会を楽しんでいた。

 その後、札幌ドーム内を大移動しながら報道陣の輪に加わったビッグボスは「今日は何点だった? カウンタックはやっぱり雪をイメージして、白を探していた。実はあの車、タイガース時代に乗っていて運転も簡単だった。(エンジンの)音聞こえてました? よかった~。つかみOK!」とおよそプロ野球の監督らしからぬ、軽いフリートークで囲み取材を開始した。

 その後は「ボクが楽しんだだけ。やっぱりね、本人が楽しいとファンが楽しいじゃないですか。楽しませようではないんですよね~。ただただ、よくファンには愛されたとか言われるんですけど、ボクがただ愛してるだけなんで。これからもどんどんやっていきたい」と、真剣なまなざしでエンターテインメントに対する持論を語りながら、自らの野球観の本質にも、切り込んで行った。

 では、新庄監督はどんなチーム改革を考えているのか。

「もうね、戦力は二軍の選手だと思っている。二軍の選手を育て上げる。何とか補強もせず、今年まで苦しんできた3年間というものをボクのアドバイスや行動やトークでどれだけ変えられるか、というのはものすごく楽しみ。いい選手を獲ってきてというのは、何かあんまり面白くないんだよね」

 そう言った後で「ボッロボロになったりしてね(笑い)。でも、どっちかでいいと思う!(上昇して)グーンなのか、(下降して)ガーッなのか。極端な方が好きなの」とも話した。

 2017年オフに大谷翔平が抜けた日本ハムは、球団が理念としてきた「スカウティングと育成」がパッタリと滞り、3年連続5位という低迷期に突入した。

 その間にソフトバンクは日本シリーズ4連覇というピークの時を迎え、西武はリーグ連覇、そして今年は前年最下位だったオリックスも山本、宮城という若き左右の両輪、吉田正、杉本という打線の中軸が育ち25年ぶりにパ・リーグを制した。

 いつの間にか自慢の育成が停滞し、これといった特徴のないチームになってしまった古巣を、若手の底上げだけで立て直そうというのだ。

「そんなに強いチームじゃないし、シーズン中はいろんなことがあると思う。船が壊れ始めたりして、嵐の時はみんなで壊れた場所を直しながらゴールまでたどり着こうという思いで船旅が始まる」

 その覚悟と見えている現実は、派手な容姿やパフォーマンスとはあまりにかけ離れて堅実なもの。大補強をおねだりしない、そんな常識人が、人を楽しませるためにエンターテイナーを演じているからこそ、選手もファンもその虜になってしまうのかもしれない。