【楊枝秀基のワッショイ!スポーツ見聞録】阪神のドラフト1位、しかも同じ背番号15を背負った男も、西純矢のプロ初登板初先発初勝利を喜んでいる。約20年前、2000年に逆指名でタテジマに袖を通した藤田太陽氏(41=ロキテクノ富山監督)がその人だ。

 藤田氏は西純の高校時代、複数回にわたって直接指導した縁もある。もちろん、当時からそのポテンシャルを見抜いていた。スライダーの握りを質問され、中指を基準にしてボールにかけるスタイルを伝授した事実も残っている。

 藤田氏は西純をプロ入り後も見守っていた。そして、ルーキーイヤーだった昨年の夏ごろ、ウエスタン・リーグでの投球を映像を通して見て懸念事項を示していた。

「元来、西くんは力投型の投手なのですが、少し強引に無理やり投げている感じがあった。本当は『おりゃあ~』って投げてはダメなタイプの投手。バランスよく投げた方が球の質が上がるんですよね」

 その懸念が的中したように西純は昨年8月途中から約1か月、実戦を離脱した。その後は安藤育成コーチ(現二軍投手コーチ)とともにフォーム修正に専念。そのかいもあってか、今季は一軍キャンプに帯同した。

 そしてひと回り成長した2年目ドラ1は初舞台のマウンドで、藤田氏の示していた一抹の不安を吹き飛ばしてくれた。

 立ち上がりに緊張で制球を乱す場面もあったが落ち着いて修正。梅野の好リードにも導かれ、ゆったりしたフォームからカーブを投げることで、本来の投球スタイルを取り戻した。

 阪神の暗黒時代に巨人を選ばずタイガースを逆指名した藤田氏。01年のデビュー戦は東京ドームの巨人戦で打ち込まれてしまった。とてつもない重圧を知るからこそ、15番の後輩の偉業を頼もしく見つめていたに違いない。

 ☆ようじ・ひでき 1973年8月6日生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、阪神などプロ野球担当記者として活躍。2013年10月独立。プロ野球だけではなくスポーツ全般、格闘技、芸能とジャンルにとらわれぬフィールドに人脈を持つ。