【カリフォルニア州アナハイム発】エンゼルスの大谷翔平投手(27)は12日(日本時間13日)に本拠地でのマーリンズとの交流戦に「1番・DH」で先発出場した。開幕から5試合不発で心配される中、11日(同12日)のマーリンズ戦の試合中にとったある行動が全米で話題を呼んでいる。なんとベンチでバットに“ホームランよ出ろ!出ろ!!”とばかりに心肺蘇生を試みたのだ。想像のはるか上を行く行為にエンゼルスナイン、報道陣、ファンはそろって笑顔。さすがスーパースターだ。

 米大リーグ機構(MLB)公式サイトが「大谷は右投手、DH、それとも医師か」のタイトルで大谷が自身のバットに心臓マッサージを施し、さらに人工呼吸したことを映像とともに伝えている。

「彼は才能があり、打ったり、投げたり、走ったりすることができるが、彼の最新の才能はこれまでで最も印象的かもしれません。無生物に対してCPR(心肺蘇生)を実行することです」

 6回、大谷はベンチで定位置の後列ではなく前列に着席。横に寝かせたバットに覆いかぶさるとおもむろに数回ポンピング、次に頭を下げて顔を近づけると“ふ~、ふ~”と息を吹き込んだのだ。続けてポンピングしてバットを手にするやニコリ。周囲は笑いに包まれた。同サイトは「大谷は5試合で5三振、打率1割4分3厘。状況を好転させるためにバットに新しい命を吹き込む必要があったのかもしれません」と解説した。

 試合前、マドン監督は「(動画は)見ていない。ワオ!ああ、本当に彼は素晴らしいよ。みんなに彼がいかに面白いか、知ってほしい」とうなずいた。

 エンゼルス戦の解説を務めるOBのマーク・グビザ氏は「CPRのマネをバットにしているの見たかい? なんて楽しい人柄なんだろうね。入団当初、彼のその人柄のことは全く知らなかったけど、日々関わる中で、球界でも特に面白いキャラの一人だと分かってきた。翔平の試合でのエモーションの出し方とか、最高だよね」と笑顔だ。

 米メディアのツイッターも相次いで取り上げた。Cut4は「バットたちが病気だ(爆笑の顔文字)」と爆笑。ヤフーファンタジースポーツは「大谷翔平が自分のバットに本当にCPRを行った。君のファンタジーチームで蘇生が必要なのは誰だい?」と仰天。USAトゥデー紙も「5試合21打席で大谷翔平はたったの3安打、5三振で無四球。心配するなかれ。彼には解決策がある」とファンに呼びかけた。

 昨年の46本塁打、100打点の活躍で相手バッテリーの攻め方がより厳しくなったことはあるだろうが、開幕から5試合、いつもの大谷ではなかった。高々と打ち上げた打球はメジャー5年目で初の開幕投手を務めた7日(同8日)のアストロズとの開幕戦の8回二死三塁で打ち上げた右飛と8日(同9日)の2戦目に9回先頭で放った中堅への大飛球くらい。10日(同11日)の4戦目に3回一死一塁で自己最速119・1マイル(約191・7キロ)のロケット二塁打を放ったが、打った瞬間に本塁打と分かる打球はなかった。

 それにしても意識することなく他人を笑顔にできるのが大谷だ。米国でもチームメート、報道陣、ファンに愛されるゆえんだ。“新たな命”を吹き込んだバットで好調を呼び込む。