エンゼルスの大谷翔平投手(24)が22日、都内で会見を行い、メジャー1年目を「いいシーズンだったと思える」と総括した。近代野球で前例のない投打の「二刀流」でア・リーグの最優秀新人(新人王)に輝いた歴史的一歩は、今後の日本人大リーガー誕生にどんな影響を与えるのか。日米野球で2発放ち、メジャーに最も近い日本人野手、ソフトバンク・柳田悠岐外野手(30)は意外な反応を示した。

 日本人のメジャー挑戦の歴史において、先達の実績が後進にも影響を与えてきた。成功例の多い投手とは対照的に野手はその傾向が顕著だ。イチロー、松井秀喜らは確かな実績を積み重ね、その後の日本人野手に勇気を与えた。一方、日本で頂点を極めて海を渡りながらも、満足な結果を残せなかった者も多い。

 ある現役内野手の一人は「松井稼頭央(現西武二軍監督)さんのすごさを知っているからこそ、メジャーのレベルの高さと距離を感じた」と言う。日本でトリプルスリーを達成するなど、史上最強遊撃手とも称された松井稼は計7季で規定打席到達が2度だけ。その後のメジャー市場における日本人内野手に対する評価と日本人野手全体の米挑戦意思に影響を与えた。

 その点、投打で実力を証明し、新人王に輝いた大谷の成功は今後メジャーを志す日本人にとって明るい材料だ。今秋の日米野球では秋山翔吾(西武)、柳田悠岐(ソフトバンク)、山崎康晃(DeNA)らが高いパフォーマンスを見せ、メジャー関係者の熱視線を浴びた。なかでも侍の4番打者として第1戦でサヨナラ弾、第2戦でも豪快な一発を放った柳田の活躍は米本土でも報じられ、一気に株を上げた。それでも柳田は「メジャーでやってみたい気持ちはありますが、それはあくまで『憧れ』であって『行けるのか』というと別の話」と冷静に話す。

 では、昨季まで日本でしのぎを削った大谷の活躍は柳田にどんな影響を与えたのか? 当の本人は真剣な表情で「参考や励みには全然ならないです。大谷は何人とか、そういう(人種の)枠を超越した存在だからです。その見方は向こう(メジャー関係者)も同じだと思います。もう日本人という枠で見ていない。大谷の成績はそういう対象にはなり得ない。僕らは(大谷に)日本で見せつけられていますから、余計にそう感じる。大谷は一人でチームを勝たせられる存在。僕らは『大谷がいたらずっと優勝できない』とまで思わされた。そういう選手と自分とを比較することはできないんです」と訴えた。

 大谷は日本人野手では2013年の田中賢介(現日本ハム)以来のメジャー挑戦で、規定打席未到達ながら22本塁打を放つインパクトを残した。だが、次なるメジャーの有力ターゲットである日本人最強スラッガーの言葉を借りれば、大谷の成績は「追い風」にはならない。柳田の率直な感想が、大谷のスケールの大きさを物語っている。