2017年パ・リーグ最多勝右腕の東浜巨投手(36)が、ソフトバンクから広島に無償トレードで移籍することが6日に両球団から正式に発表された。22年にノーヒットノーランを達成するなど通算76勝をマーク。かつての甲子園優勝投手でドラフト1位入団のエリートは、鷹の生存競争の厳しさを知る一人だ。

 ホークス一筋14年。その間、チームは7度のリーグ優勝、8度の日本一に輝いた。主力として歓喜の輪に加わることもあれば、一軍登板なしに終わった今季のように戦力になれない悔しさも味わった。

 常勝ホークスは、なぜ強いのか――。潤沢な強化資金だけが理由ではないはずだ。「気持ちはずっと変わらず、この14年間を過ごしてきた」。タイトル獲得経験のある右腕が抱え続けてきた危機感があった。

「選手一人ひとりのレベルが高い。もう毎年のように激しい争いがあって、その中で一年、一年必死につかみ取りに行くという気持ちは変わらなかった」

 一過性の活躍では生き残れない厳しい現実に、慢心が生まれる余地はなかった。慣れ親しんだ福岡を離れる右腕は、さらにこう続けた。

「そういった意味で、強さの源は(常に)競争があって、その中でチームが勝つためにどうしたらいいかを選手個々が考えてプレーする。それがまとまることで、強いチームになっているという印象」

 激しい競争がレベルの高い「個」を生み出し、その「個」がまとまるために必要な手段や勘所を心得た選手たちがいる。「僕にとっては本当に大きな財産」。組織の中心に身を置き、神髄を受け継いだ者にしか分からないイズムが確かにある。

 今季序盤、右肩の不調に悩まされた。一軍の舞台から遠ざかり、気がめいるようなリハビリ期間も「投げやりな姿は絶対に見せてはいけない」と気持ちを奮い立たせていた東浜。「常に見られているんだという気持ちで、目の前のことに集中しようと思った。無頓着そうに見える若い選手が、意外と見ていたりするんですよね」。ファームでの日々、チームにとって少しでもプラスになる行動を心掛けていた。

 功労者とは、グラウンド内の成績だけで定義づけられるものではない。球団が再び輝ける道筋をつけた「無償トレード」。誇り高き36歳は、新たなスタートラインに立ち、気持ちを高ぶらせている。