シルエットは、いまだ現役だ。巨人の秋季キャンプは7日から第3クールがスタート。古巣復帰を果たした松井秀喜監督(52)の一挙手一投足に熱い視線が注がれる中、現役時代とほとんど変わらないスマートな体形も話題を呼んでいる。本人は日頃の運動習慣を否定するなど謙そんするが、周囲の証言から浮かび上がるのは食生活への配慮と秘めた矜持(きょうじ)。その根底にある〝ゴジラ流美学〟に迫った。

 10月30日に始まった秋季キャンプは、早くも折り返し地点を迎えた。当初は「情報収集」に徹していた松井監督も、第2クールからは教えを請う若手に身ぶり手ぶりで助言し、精力的に指導している。5日の練習中には、おもむろにバットを握って約10秒間の素振りを披露。往年を思わせるスイングだったが「ずっと立ったり座ったりしてると段々腰が痛くなってくるんで。ちょっと回したくなっただけなんで。それだけです」とけむに巻いた。

 驚くのは、引退後もほぼ変わらない体形だ。現役時代は人並み以上に栄養を取り、鍛錬で屈強な肉体を維持してきた。だが引退すれば運動量は減り、年齢も重ねる。以前と同じ生活では、体形は崩れかねない。

 それでも松井監督本人は「運動はしてないですね。しないとまずいですよね。ちょっと考えます、これから」と謙そん。続けて「自分、ちょっと膝が悪いんでね。両方手術してるんで。歩きすぎると膝が悪くなるんで、自転車で(球場に)通おうかな。なんかいいのプレゼントしてもらえる? 自分で買えって? どんな自転車がいいか分からないんで。競技用のバイクとか結構あるじゃないですか」と、冗談交じりに自転車通勤案まで披露した。

 ヤンキース時代の2007年には右膝の軟骨除去手術を受けており、激しい運動は難しい面もある。ではなぜ、体形を保てるのか。まずは食生活だ。チーム関係者は「松井監督は大柄な体格に反して食事の量はかなり少ない。メニューの中から大体1品ずつ選んで、それをゆっくりと食べる」と、キャンプ中の小食ぶりを証言した。

 運動についても、現役時代から知る別の関係者は「師匠の長嶋さんは引退してからも決してぶくぶく太るようなことはなく、監督時代も巨人のスター選手としての威厳を示していた。その教えを受けている松井監督も、あの頃(現役時代)からほとんど変わらない。体形維持のために部屋でできる程度の運動や、ジムでの適度なトレーニングを変わらずやっているはず」と推察。〝陰の努力〟の存在をにおわせた。

スマートな体形を維持する松井新監督
スマートな体形を維持する松井新監督

 象徴的なのが10月23日の監督就任会見。着用したスーツは13年に長嶋茂雄氏と国民栄誉賞を受賞した際のもので、サイズ直しをせずに着こなしたという。

 選手たちは日々厳しい練習に汗を流し、体づくりと向き合っている。その若手を指導する以上、自らも節制を怠らず現役時代の面影を保ち続ける。そんな姿勢にこそ、言葉だけでは伝えきれない説得力が宿るのだろう。無論、現役選手と同じ運動量をこなす必要はない。年齢や膝の状態に合わせ、できる範囲で体を律することにも意味がある。かつて厳しい鍛錬で巨人の4番を務めた男が、指揮官となっても自分には甘くならない。

 多くを語らずとも、変わらぬ体形は若手への無言のメッセージとなる。努力を声高に語らず、背中で示す。それこそが〝ゴジラ流美学〟だ。