巨額投資をためらっている間に、宿敵にさらわれたら元も子もなくなる。ヤンキースが日本の三冠王を追う意味は、単なる戦力補強にとどまらない。ニューヨーク発の〝争奪戦警報〟が波紋を広げている。

 米メディア「エンパイア・スポーツ・メディア」は28日(日本時間29日)、今オフに阪神からポスティングシステムでメジャー移籍を目指す佐藤輝明内野手(27)について、ヤンキースが巨費を投じてでも獲得を検討すべき理由を掘り下げた。最大のポイントは、長年にわたって決定打を欠いてきた三塁の補強だ。

 佐藤は今季、打率3割6厘、39本塁打、106打点でセ・リーグ三冠王。昨季も40本塁打を放ち、三塁手としてゴールデン・グラブ賞を受賞した。同メディアは、左の長距離砲と正三塁手という2つの課題を同時に解消できる可能性に着目。短期的な穴埋めを繰り返すより、将来の中軸を確保する方が合理的だと説く。

 ただし、必要な〝軍資金〟は桁違いだ。元GMのジム・ボウデン氏が予想した契約規模は5年総額1億8000万ドル(約284億円)。同メディアの試算では、阪神への譲渡金2887万5000ドル(約46億円)も加わり、総負担は約2億887万5000ドル(約330億円)に膨らむ。ただしこれは正式な提示額ではなく、あくまで予測に基づく数字だ。とはいえ、莫大な負担額となるのは間違いない。

 メジャーの投手への対応力や三振の多さ、三塁守備の適応など不確定要素もある。それでも同メディアは、トレードで有望株を手放さずに27歳の強打者を獲得できる利点を評価する。

 記事は一方で、打撃や守備の評価が伴わなければ、より安価な代替案を選ぶべきだとも指摘。資金力に任せた〝札束攻勢〟を無条件に勧めているわけではない。

 そして、見逃せないのが最大のライバルの存在だ。ボウデン氏はヤンキースのほか、レッドソックス、フィリーズ、エンゼルスも獲得候補に挙げる。同メディアは佐藤の実力がメジャーで通用すると判断できるなら5年契約を検討する価値があるとし、「これほどの打撃力を持つ選手をボストンに奪われるのは、ヤンキースにとって非常に残念な結果」と警鐘を鳴らした。

 補強の成否だけでなく、宿敵の戦力増強を許すか否か。佐藤を巡る攻防には、伝統のライバル関係まで絡み始めている。