眠れる地区ライバルが、札束と「勝者のノウハウ」を手に目を覚ます――。米老舗誌「スポーツ・イラストレイテッド」の電子版「ON SI」は2日(日本時間3日)、エンゼルスの身売りが同じア・リーグ西地区のマリナーズにとって新たな脅威になると警鐘を鳴らした。

 エンゼルスは1日(同2日)、アルテ・モレノ・オーナー(80)の一族が、NFLラムズなどを傘下に持つクローンケ・スポーツ&エンターテインメント(KSE)へ球団の経営権を売却することで合意したと発表。MLBオーナーの承認を経て、2027年第1四半期中の取引完了を見込む。金額は公表されていないものの、米報道ではMLB史上最高額となる40億ドル(約6360億円)規模とされる。

 これに戦々恐々としているのがマリナーズだ。同誌は、エンゼルスがマイク・トラウトと現ドジャースの大谷翔平を同時に抱えながら、2014年を最後にポストシーズンから遠ざかっている現状を指摘。その長期低迷が結果的にシアトルにとって「地区レベルの安全網」になっていたと皮肉った。

 だが、その〝安全網〟が消える可能性が出てきた。買収に動いたスタン・クロエンケ氏(79)はラムズ、NBAナゲッツ、NHLアバランチ、MLSラピッズ、イングランド・プレミアリーグのアーセナルなどを所有。潤沢な資金力だけでなく、複数競技で勝てる組織を築いてきた実績を持つ。

 一方のマリナーズは投手育成や選手発掘に定評があるものの、同サイトはジョン・スタントン会長(71)ら経営陣が「わずかな差で優勝争いに食い込む」やり方に頼り過ぎていると問題提起。内部成長や的確なトレードを前提とした慎重路線は、資金力のあるライバルが本気で勝負を仕掛けてくれば、たちまち苦しくなるというわけだ。

 同地区には、すでに積極投資をいとわないアストロズとレンジャーズがいる。アスレチックスもラスベガス移転後の攻勢を視野に入れる。そこへ〝眠れる巨人〟エンゼルスまで目を覚ませば、マリナーズに残された逃げ道は一気に狭まる。

 クロエンケ体制がすぐに成功する保証はない。それでも「エンゼルスはどうせ低迷する」という前提で戦える時代は終わりを迎えようとしている。シアトルに突きつけられたのは、単なるライバル球団のオーナー交代ではない。ア・リーグ西地区の勢力図そのものを書き換えかねない〝警報〟である。