【グレイシーハンターの〝真実〟 IQレスラー桜庭和志 実録 桜道(36)】2008年に格闘技イベント「DREAM」が旗揚げされ、それまで「HERO’S」で戦っていた僕も、この新イベントに参戦することになりました。PRIDEとHERO’Sが合流してできたこのイベントですが、僕は一緒にできてうれしかったです。

 なぜならHERO’Sは軽い階級が、PRIDEは重い階級がそれぞれ盛り上がっていたから。両団体が一緒になればいいものができると思ったんです。4月29日の「DREAM.2」で開幕したミドル級グランプリに参戦することになりました。当時39歳で肉体的にもキツいし「出たくない」って言った気がします(笑い)。1回戦の相手はアンドリュース・ナカハラ(ブラジル)。強かったですよ。

 体が柔らかく、タックルしても倒れなくて。最終的にはもう無理くりに押して倒してフェースロックをここぞとばかりにしました。テークダウンするのが一番疲れるので「ここで決めなきゃ、もう俺、バテてできねえよ」と考えながら、死ぬ思いで顔を絞め上げました(1ラウンド8分29秒、フェースロックで勝利)。

 問題は2回戦ですよ…。6月15日の「DREAM.4」でメルビン・マヌーフ(オランダ)と対戦したんですが、神様が〝出るな!〟と言っているのか、試合の1週間ほど前にヒザをケガしたんです。左右どっちだったかは覚えていないですけど、練習の中でバチッとやってしまいました。

マヌーフ(上)には大苦戦(08年6月)
マヌーフ(上)には大苦戦(08年6月)

 まったくヒザが曲がらない状態になってしまって、関係者に「試合はできません。立ってるしかできないんです」って伝えたんです。それで「ケガで試合をキャンセルした選手って、ほかにもいましたよね? 僕も同じようにキャンセルさせてください」ってお願いしました。

 ところが答えは「立ってるだけでいいから出て」。結局、そのまま試合に出場することになりました。結果、立っているだけのところにハイキックを受けて左腕尺骨を骨折しました(1ラウンド1分30秒TKO負け)。

 もうちょっとステップとかできれば受け流したりできたかもしれないんですけどね。だけど、本当に立っているだけしかできなかったから…。試合前にセコンドに就いた若手選手に「桜庭さん、タックルとか入れないですか」って聞かれて「だからできないって言ってるじゃん!」って答えたんですよ。それで試合が終わった瞬間に「ほらな?」って。

 その後、たばこを吸いながら、その若手と「だろ? 立っていることしかできねえのに、なんでやんなきゃいけねえんだよ(笑い)」って話していたら、そこにたまたま谷川(貞治)さんたちが来て困った顔をしていましたよ(笑い)。 

 

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