ソフトバンクは5日のロッテ戦(みずほペイペイ)に7―2の快勝を収め、カード勝ち越しを決めた。中盤までに近藤の2本塁打、6打点の活躍で主導権を握ると、終盤は盤石の救援陣がリードを守り切った。

 辛抱の末に本来の輝きが戻ってきた。8回から4番手でマウンドに上がった松本裕樹投手(30)が、1番から始まる好打順をわずか7球で三者凡退。これで11試合連続無失点となり、防御率は1・95まで良化した。

 昨季、最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得した右腕は、今春開催されたWBCに出場。「いろんな過程を飛ばして、形だけ仕上げないといけない感じだった」。3月上旬にトップギアで投げる状態をつくるため、犠牲にしたものは多かった。方向性を確認するための貴重な実戦の場であるオープン戦を経ずシーズンに入る難しさを痛感。5月までは不安定な投球が続き、我慢の時間を強いられた。

 オフにさらなる進化を目指していた。「平均から外れる真っすぐを投げたい。それは、ベース板に対して平行に伸びるストレートです」。昨今の野球界では、投球がベース板を通過する際の「入射角度」が水平に近いと空振りや平凡な飛球になりやすいという傾向がある。182センチの上背ながら低いリリースポイントから160キロに迫る剛速球を投げ込む。平均から外れる希少性ゆえに、2月の代表合宿ではアドバイザーとして参加していたダルビッシュ(パドレス)が目を丸くするほどだった。

 だが、チーム帰還後、その特長を伸ばす投球がイレギュラーを生んでいた。悪い時のフォームが顔をのぞかせ、痛打を浴び続けたのだ。進化への道を一時休止し、方向性の転換を決断。葛藤もあっただろうが、絶対的セットアッパーという責任感が冷静な判断を後押しした。

 世界レベルを知るからこそ、生まれる葛藤もある。ひとまず〝孤独な戦い〟を制し、頼れる男が本来の姿を取り戻した。