エースの右腕が、勢いづくGをセ界のてっぺんへ押し上げた。巨人は10日の楽天戦(楽天モバイル)に7―0で完勝し、2つの引き分けを挟んで6連勝。交流戦に入って6月負けなしの快進撃で、今季初のセ・リーグ単独首位に浮上した。主役は先発した戸郷翔征投手(26)だ。9回134球を投げ抜き、5安打無失点。自己最多の14奪三振を奪う圧巻の投球で、自身2年ぶりとなる完封勝利を飾った。その裏には才能だけでは片づけられない、血と汗と涙を紙に刻み続けた日々があった。

 初回から戸郷はエンジン全開だった。楽天打線を力で押し込み、変化球で泳がせ、面白いように三振の山を築いた。最後までマウンドを譲らなかった右腕は「まだまだですけど、完封できたのは自分の中ですごくいいバロメーターになると思いますし、何球かかっても最後まで投げ抜くっていうのはチームにとってはすごく大きいことだと思うので、それができてホッとしてます」と胸をなで下ろした。

 昨季は自己ワーストの8勝9敗、防御率4・14。エースと呼ばれてきた男にとって、苦しみ抜いた一年だった。今季も開幕は二軍スタート。それでも5月以降は先発ローテーションの一角として徐々に本来の姿を取り戻し、この日の快投で完全復活を強烈に印象づけた。その裏にあるのが、高校時代から続ける「メモ習慣」だ。戸郷は春季キャンプ中から「書き記すことが好きで、重要だなと思っていて」と語り、通常練習やブルペンで得た気付きをノートに残してきた。「昨日はお風呂に入る前に20分ぐらいかけて書いてました」と明かしたこともある。

 ノートに刻まれるのは、単なる練習日誌ではない。菅野(現ロッキーズ)や田中将ら先輩投手からの助言、コーチやスタッフの言葉、自身の体調、故障の経過まで細かく残す。「あの時期にこんな症状があったとか、そういうことを書いておくと後の指標になる。不調の時の気付きも体が良くなると忘れてしまうので、また振り返れるようにしています」と話していた。

 しかも、こだわりは徹底している。「データだといつか消えちゃうかもしれないので」と紙で残すことを重視。携帯のメモ機能に書いた内容も「わざわざコピー機を買って家でコピーしてる」といい、「2019年からのものは紙として残っています」と胸を張る。

 もはや日課ではなく「プロ野球選手・戸郷翔征」を作り上げてきた〝虎の巻〟だ。6月負けなしで首位を奪った巨人。その快進撃の中心には、ノートに悔しさも気付きも刻み続けてきたエースの執念がある。