【昭和~平成スター列伝】今年の全日本プロレス、春の祭典「チャンピオン・カーニバル2026」は“マット界随一の偏屈者”こと鈴木秀樹が、優勝戦で潮崎豪を撃破して初優勝。6月18日後楽園ホールで3冠ヘビー級王者の宮原健斗に挑戦することが決定した。鈴木は言わずと知れた“人間風車”ビル・ロビンソンの最後の弟子であり、王座奪取となれば3冠王座の歴史が大きく変わることになる。

シビアな勝負に徹した馬場の16文キックが爆発
シビアな勝負に徹した馬場の16文キックが爆発

 そのロビンソンは1976年に全日本に初参戦し、ジャイアント馬場のPWFヘビー級王座に挑戦している。75年12月11日蔵前では、アントニオ猪木と60分引き分けでプロレス史に残る伝説の名勝負を展開したが、新日本参戦はこのシリーズのみに終わり、全日本に戦場を移して76年7月24日蔵前で注目の初王座戦が実現した。この試合、馬場は相手の良さを殺す「シビアなプロレス」に徹したとされる。

「馬場が久しぶりに“東洋一のレスラー”の勝負魂を見せ31回目の防衛に成功した。相手が世界的な実力者ロビンソンということもあって、馬場は慎重に作戦を立てていた。1本目、一瞬のタイミングをつかんでバックドロップを成功させたのも、馬場のファイトが爆発したからだ。もうひとつ、馬場は実にうまい防御を見せた。ロビンソンの十八番“人間風車”ダブルアームスープレックスに対するありとあらゆる防御策を研究していたあたりはさすがベテランだ。2本目はロビンソンに左足を決められたが、これもダメージを最小に食い止めるため急いでギブアップした。これも妙なプライドよりも“見切り”で勝負に出たのである。最後はフライングネックブリーカードロップで勝利。『汗ですべって大技がきかないから空手チョップの打撃戦でマイペースに持ち込んだ』と馬場は試合後に語ったが、これもプライドを捨ててかかった馬場の“無心の勝利”といっていい」(抜粋)

 その後、ロビンソンは全日本に定着し、馬場の好ライバルとなる。そしてこの試合からちょうど50年。人間風車の弟子が王道マットの頂点に挑む。和田京平名誉レフェリーは鈴木のファイトを「ロビンソンのようなクラシカルなうまさにルー・テーズのような大技も備えている。鈴木は観客の反応を見ながら試合を組み立てられるんだよ。例えば脇腹を5分間、延々と攻めた後に今度は他の箇所を攻めて、また脇腹に戻る。だから客は目が離せない。鈴木の試合中はケータイを見てる人なんかいないよ。鈴木が全日本に染まったんじゃなく、鈴木が全日本を染めちゃったんじゃないかな」と高く評価する。

 注目の3冠戦については「宮原の大技を中心とした現在のプロレスと鈴木のクラシカルなプロレス。これは絶対面白い勝負になるし、相手に合わせた方が負け。鈴木がチャンピオンになったら(防衛は)長いと思うよ」と予想した。果たして王道マットに新たな歴史が刻み込まれるか。   (敬称略)