阪神が10日の中日戦(バンテリン)に5―3で劇的な逆転勝利を収め〝定位置〟の首位に立った。2点を追う9回無死から佐藤輝明内野手(27)、大山悠輔内野手(31)の連打で反撃の口火を切ると、二死一、三塁から代打・前川右京外野手(22)の適時二塁打に相手失策も絡み、一気に試合をひっくり返した。土壇場の大逆転を呼び込んだ下地の一つは、先発した村上頌樹投手(27)が崩れずに踏ん張った7回2失点の投球と「割り切り」にあった。
113球を投げて6安打2失点。制球に本来の鋭さを欠き、5回をのぞいて毎回走者を背負う苦しい内容だったが、村上が試合を壊さなかった意味は大きい。2回は味方の失策と四球が絡んで一死満塁のピンチを招き、木下の遊ゴロの間に先制点を失った。3回も二死二塁から細川に適時二塁打を浴びたが、それでも踏みとどまった。苦しいなりに最少失点で食い止めて終盤まで反撃可能な点差にとどめ、最後のドラマを呼び込んだ。
試合後、村上は「右京が打ってくれて助かったというか、感謝したいです」と逆転打の前川に頭を下げ「すぐマウンドにアジャストできるように、もっともっと練習したいです」と課題も口にした。結果だけを見れば粘投だが、本人に慢心はない。
ただ、この日の内容で見逃せないのは、登板前にすでに自らの現状と向き合い、割り切るべきポイントをはっきり言語化していたことだ。村上は自身の状態について「状態は変わらないというか、良くない」と率直に認めつつ「ボールが大幅に変わったという感じもしませんし、少しのコントロールのズレというところ」と冷静に分析。その上で狭くなったバンテリンドームのような環境でも一発を恐れて縮こまるのではなく「攻めていって、それが結局ホームランだったっていうのは仕方ないので。もう割り切るしかない」と語っていた。
不完全な状態でも、持ち味まで手放さない。その腹のくくり方が、この日の粘投にそのまま表れていた。藤川球児監督(45)も「先制はされましたが、7回まで尻上がりにあげていってくれたこととかの積み重ねでいい方に転んでくれましたね」と評価。まさに指揮官の指摘した「積み重ね」が、終盤の逆転を呼び寄せた形だ。
2023年にMVPと新人王を獲得し、翌24年は7勝11敗と苦しみながらも、昨季は投手3冠に輝いた。2年続けて結果を残す難しさを知る右腕だからこそ、状態が万全でない時期の戦い方も分かっている。派手さはなくても、自分を見失わずに試合をつくる。村上の真価は、むしろこういう苦しいマウンドこそあらわになる。












