快挙の裏にあったのは「弱点との決別」だった。日本ハム・細野晴希投手(24)が31日のロッテ戦(エスコンフィールド)で無安打無得点を達成。プロ初完投、初完封をノーヒットノーランで飾る離れ業をやってのけた。ただ、この一戦をただの〝覚醒劇〟で片づけるのは早計だ。自らの足を長く引っ張ってきた制球難に真正面から手を入れてきた積み重ねこそが、3年目左腕を歴史的なマウンドへ押し上げた。

 球威は一級品だっただけに課題を克服すれば、この結果は決して不思議ではなかった。プロ3年目左腕の細野は初回先頭の高部にいきなり四球を与えたものの、直後に藤原を遊ゴロ併殺で仕留めると、そこから抜群の投球を披露した。150キロ台の直球とスライダーを軸に相手打線を翻弄し、6回には友杉、小川、高部から3者連続三振。球数が100球を超えた8回も寺地、ソト、山本を3者連続三振に仕留めた。

 超満員の大歓声を受けて上がった最終回も二死無走者から清宮幸の失策で走者を許したが、全く動じなかった。最後は藤原を見逃し三振に仕留め、計128球でNPB史上91人目、通算103度目となる大偉業を達成した。「試合では本当に無安打無得点は目標にしていなかったのでおまけみたいなものですけど。でも、ちゃんとゼロで抑えられたのは自信になりました」。笑みを浮かべて快挙を振り返ったが、本拠地開幕戦で大仕事をやってのけた背景には、やはり長年苦しんだ制球難からの脱却があった。

 東洋大時代から球の威力は一級品と評されながらプロ入り後も悪癖は解消できず、四球で走者をためて自滅するパターンを払拭できなかった。だが今春の自主トレから自軍の先輩・伊藤に弟子入り。最多勝投手から肉体面、精神面の極意を学び「本当にメンタルだけでなく、いろいろなことを教えてもらったので」と課題克服への手応えをつかみ始めた。

 さらに今春キャンプでは、制球難克服へ腕の角度にもメスを入れた。これまでの高い位置から少し腕を下げるなど試行錯誤を繰り返し、ボールの精度を向上。その結果がオープン戦中盤から表れ、投球が安定したことで先発ローテーション入りに名乗りを上げ、今回の偉業につなげた。

 本人によれば、投球時の腕の振りやフォーム修正は「まだ全然(完成していない)。試合の中で試しながら今もやっています。ただ最低限、試合を作れるレベルにはある」という。まだ成長途上だからこそ、今後はより精度の高い投球になる可能性を秘める。

 ベンチで偉業を見守った新庄剛志監督(54)も試合後、開口一番「いや、すごい。びっくりしましたね」と絶叫。「初回に四球を出した後にゲッツーを取れたのがノーヒットノーランにつながったと思う。でも今日、試合前ブルペンから緊張していたんだけど、彼は緊張したらいい投球ができるタイプなので。これからもさらに緊張しまくってもらってね(笑い)。9回で(速球が)150キロ出てたでしょ。今後がほんと楽しみですね」と目を細めた。

 チームの連敗を「3」で止めた左腕は、試合後に次戦も無安打無得点を狙うのかと問われると「いや、はい。目指します」と笑った。この日を境に〝細野株〟は一気に急騰しそうだ。