アーロン・ジャッジ外野手(33=ヤンキース)のひと言が、決勝前夜の米球界に妙な熱を生んでいる。ヤンキース専門メディア「ピンストライプ・ネーション」は、米国代表の主将を務めるジャッジが16日(日本時間17日)のWBC準決勝ドミニカ共和国戦(ローンデポ・パーク)後、マイアミの熱狂について「ワールドシリーズよりもすごかった」と語ったことで、ヤンキース周辺にも波紋が広がっていると報じた。
米国は同日の準決勝でドミニカ共和国を2―1で下し、17日(同18日)の決勝でベネズエラと激突する。問題の発言は大会の格やヤンキース愛を測る文脈というより、ローンデポ・パークを包む異様な空気への率直な感嘆だった。実際、今大会のマイアミは各国ファンの太鼓、旗、大合唱が連日うねり、通常のポストシーズンとは別種の熱を生んでいる。それでも、2009年以来世界一から遠ざかり、24年ワールドシリーズもドジャースに敗れたヤンキースの現実を思えば、主将の比較表現がブロンクスの神経を逆なでするのも無理はない。
しかもジャッジ自身、昨季のポストシーズンでは苦しみ、2年前のワールドシリーズでも決定的な仕事を果たせなかった。だからこそ、今回の言葉は単なる感想では終わらない。ニューヨークでは「WBCの熱狂に酔った発言」ではなく、「ならば本丸のワールドシリーズも勝ってみせろ」という問いとして返ってくる。主将の口から出た比較論は、称賛であると同時に自らへ突きつけた宿題でもある。
もっとも、ジャッジは今大会6試合で打率2割6分1厘、2本塁打、5打点。数字以上に守備、存在感、ベンチでの統率力が際立つ。米国が17年以来の頂点を奪い返せば、この一件は「失言」ではなく国際舞台の価値を言い当てた主将の名文句として回収される可能性が高い。
だが、もし決勝で敗れればどうか。ヤンキースファンの耳には、あの「ワールドシリーズよりもすごかった」が再び重く響く。決勝戦は米国対ベネズエラ。ジャッジのバットは、言葉の火種まで消せるか。












